ボディコンスーツに身を包み、ディスコのお立ち台の上で扇をはためかしながら踊る女性たち。「バブル」といえば、つい最近も流行った「バブリーダンス」のイメージそのものだ。
しかし当時を生きた人たちにとって、あの熱狂は、そんなステレオタイプなイメージで一括りにできるものではない。6月23日に発売された『バブル、盆に返らず』(光文社)は、「バブルカルチャーの真打ち」こと甘糟りり子さんのエッセイだ。
都会の真ん中でトレンドの渦中にいた甘糟さんは、当時を振り返り「1990年の私に、顔パスで入れないディスコはなかった」と語る。
そんな甘糟さんが、1980年代からバブル終息までを「ひとつのカルチャー」として捉え、あえて飾らずに愚かしさをそのままに描いた。リアルで生々しい本書は、バブルを経験した人々だけでなく、生まれてこのかた「景気の良さ」なんてものを肌で感じたことのない若い世代にも楽しめる。
本書のカバーを担当したのは、気鋭の若手アーティスト、ロビンソン愛子さん。彼女の描く現代春画も時代をよく表している。
甘糟さんは、1964年横浜生まれ。玉川大学卒業後、アパレル会社勤務を経て文筆業の道に。クルマ、レストラン、ファッションなどをテーマに「都会のきらめき」をモチーフにした小説やコラムが人気だ。著書には、『エストロゲン』(小学館文庫)、『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』(ともに講談社文庫)、『鎌倉の家』(河出書房新社)、『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)などがある。
目次は下記の通りである。
ウォーターフロントのTバック/マハラジャのVIPルームから
真夏の夜の逗子マリーナ/「バー鍵」と「スペアキー」
ラブホテル二大ブランド/チャイナタウン・パフェ
お立ち台が産まれた夜/苗場プリンス、銀世界
流行の廃棄処分/トゥーリア
六本木プリンスとホテル西洋銀座/昭和天皇が亡くなられた日
横浜ディスコテーク/SEX AND THE XMAS
家電 留守電 携帯電話/アース・ウインド&パーコー麺
環八イエスタデイ/六本木WAVE
アルファ・キュービック/西麻布ザ・ウォール
君の瞳に恋してる/デセール・リリコ
中山競馬場のオグリキャップ/ベイブリッジとレインボーブリッジ
プワゾン/東京いい店やれる店
笄櫻泉堂/芝浦GOLD
陸(おか)サーファーと関越自動車道/レストランで常連になる方法
ボジョレー・ヌーボーと日本人/『an・an』と『JJ』
ヤンエグどもが、夢の跡/六本木ヒルズ
マハラジャ、苗場プリンス、陸サーファーに「君の瞳に恋してる」......あんなに熱狂したのが、今となってはうたかたの夢。あの時代には、もう二度と戻れない。まさに「バブル、盆に返らず」だ。
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