読むべき本、見逃していない?

50代って、本当に「大人」ですか?

ガラスの50代

 「精神的にはやっと成人式。グレイヘアをきらめかせ、好きに生き始めるお年頃。なのに職場では怖がられ、恋の8050問題を抱え、母親はさらに重さを増す」――。

 本書『ガラスの50代』(講談社)は、女性の生き方をリアルタイムで捉え続けてきたエッセイスト・酒井順子さんのライフステージエッセイ。「令和の50代」のリアルが詰まった、共感必至の一冊となっている。

 高校生のときから雑誌にコラムの執筆を始めたという酒井さん。早くから人に読ませることを意識した文章を書いていたからなのか、文章が抜群にこなれている印象を受けた。

■目次
三度目の成人式/若見せバブル崩壊/働くおばさん/「懐かしむ」というレジャー/昭和と令和/感情は摩耗するのか/母を嫌いになりたくないのに/朽ちゆく肉体、追いつかぬ気分/性人生の晩年を生きる/五十代独身問題/再会と再開の季節/初孫ショック/「エモい」と「無常」/セクハラ意識低い系世代/自分がえり/三つの「キン」/コロナと五十代/好きなように老けさせて

 本書は、Webマガジン「ミモレ」(2019年1月8日~2020年6月23日)で大反響を呼んだ連載を単行本化したもの。

人生は薄く、サラサラに

 ここでは「三度目の成人式」を紹介しよう。

 「夏目漱石は、満四十九歳で亡くなりました」の一文で始まる。漱石が生きたのは「人生五十年」の時代。それに対して「人生百年」時代の今、50代として生きている自身の人生について、こう書いている。

 「人生五十年時代の五十代と比べて、明らかに『薄い』のでした。(中略)五十年と百年ということで、単純に考えれば人間の一生は二倍に希釈されたわけですが、実感としてはもっと人生はサラサラになっている気が......」

 そこで「あなたは、自分が『大人』であるという意識は、持っているでしょうか」と読者に問う。「自分の中に"非大人"の成分が意外とたっぷりと混じっていると感じることが、ありはすまいか」と。

 「薄い」「サラサラ」という表現が、ものすごくしっくりきた。この年齢になっても、思っていたほど大人でもないし、偉業を成し遂げたわけでもない。そんな自分に焦りを感じていたが、人生が「希釈」された感覚は、案外誰もが実感しているものかもしれない。

「三度目の成人式」が来るかも

 酒井さんは自身の「成人式」について、こう振り返る。二十歳で振り袖を着たのは、あくまで「仮の成人式」。32歳(30代のどこかは人それぞれ)で迎えたのが、二度目の、そして「真の成人式」。

 すっかり大人になった気分で30代、40代を生きてきたが、「実はまだむける皮があるような気がして、もぞもぞしてきた」のだとか。酒井さんは今、「三度目の成人式」が来るかも、と感じているという。

 「五十代となった今、また精神の蠕動(ぜんどう)のようなものを、私は感じるのでした。さらにもう一皮、むけなくてはいけないのではないか、と」

ガラスのように繊細な季節

 50代の前半は、特に女性にとって「節目となる時期」としている。まずは、なんといっても更年期。家族との関係では、親が自らの庇護下に入り、子どもは庇護下から離れていく。仕事面では、そろそろゴールが見えてきて、どう着地しようかと考える時期......。

 「さらなる大人へ向けて脱皮前後の五十代は、そんなわけで心身ともにガラスのように繊細な季節。だというのに、上の世代からも下の世代からも、頼りにはされても心配はされないこの年頃の懊悩(おうのう)を、これから探ってまいります」

 最後に、巻末付録「ガラスの50代 読者大アンケート」から。

 「今、悩んでいることを教えてください」「『50代までにしておいてよかった』と思うことを教えてください」などの質問が並ぶ中、最も気になったのが「誰にも言えない秘密を教えてください」。どんな回答が載っているかと、ドキドキして覗いてみると......。

 「自分の母親が生理的に大嫌い」「夫以外に彼氏が2人いる。1人は6年め、もう1人は10年めになる」など、なかなか過激である。こうした世の50代女性の声からも、「令和の50代」のリアルが垣間見える。

 本書の一部しか紹介できないのが惜しい。酒井さんの文章はなんとも独特のリズム感があり、一度読めばハマる人続出と思われる。本書を読んで、ぜひ体感していただきたい。


■酒井順子さんプロフィール

 1966年生まれ。東京都出身。立教大学卒業後、広告代理店勤務を経て執筆に専念。2003年に発表した『負け犬の遠吠え』はベストセラーとなり、婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞を受賞。著書多数。



 


  • 書名 ガラスの50代
  • 監修・編集・著者名酒井 順子 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2020年11月16日
  • 定価1705円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・226ページ
  • ISBN9784065211212

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