2022年度から高校の家庭科の授業に「投資」が組み込まれる。これからの時代を生き抜くうえで、資産形成の基礎知識は必要不可欠だということなのだろう。
カリスマ投資家、奥野一成さんの新刊『15歳から学ぶお金の教養 先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)は、高校生向けに投資の本質を解説した「日本一わかりやすい『お金の仕組み』」の本だ。
奥野さんは「お金は教養として学ぶべき」として執筆・講演活動を行っている。本業はファンドマネージャー、つまりお金のプロ中のプロだ。
本書は、高校生のA君からの「お金持ちになるにはどうしたらいいのか、知りたいです」というシンプルな質問に答えるべく、「お金とは何か」に始まり、「経済」「投資」「複利」「会社のしくみ」「価値」について、奥野さんが一つずつ詳しく解説していく。
お金持ちになるための第一歩として、奥野さんは、「お父さんお母さんや先生の言うことを、鵜吞みにしないということです」と言う。
日本の景気が良かった1990年以前の「モノの時代」には均質な労働力が求められたが、現代のような「モノ余りの時代」には、アイデアと「いかに付加価値を提供できるか」が求められている。半沢直樹の時代はもう終わったのだ、と奥野さんは説く。「組織の時代」から「個人の時代」が到来した今、親世代の常識はもはや通用しないのである。
「数年後、社会に出ていく皆さんに、生き抜く上で必要になる要素は、ユニークな発想力や、自ら能動的に行動する主体性、さらにそうした個々人をとりまとめていくリーダーシップです」
本書の内容をざっくり要約すると、以下の通りだ。
1.親世代の「組織の時代」に通用した勝ちパターンは古くなった!
アイデアさえあれば下剋上できる「個人の時代」が到来している
2.お金持ちになるには「お金の仕組み」を理解すること
会社は社長のものではない!資本主義の源流である正しい「投資」を学ぶこと
3.世の中から求められ続ける価値を提供し、自分だけにしかできない力を持つユニークな人になれ!
更に自分で稼ぐだけではなく投資で他人に稼いでもらうことがお金持ちになる第一歩
ここでいくつか、「お金持ち」になるためのポイントを紹介しよう。
■お金持ちになるなら、お金を求めてはならない
宝くじやギャンブルで大儲けしても身を持ち崩す人が多いのは、「単にお金を追い求めても、お金は逃げていく」ということの現れである。ではどうすればよいのか。
自分のためではなく、他人に対して、社会に対して「価値」を提供すればよいのです。
■あらゆる物事は投資である
「毎日のあらゆる物事は投資であると言っても過言ではない」。バイト代と時間を遊びに費やすか、資格取得の勉強に費やすかで、将来得られる収入は変わってくる。
要するに、すべては「選択」なのです。
広い意味での投資とは、「現在の資産(時間、才能、お金)を投下することで、将来的により大きな資産(時間、才能、お金)を得ようとすること」です。今、我慢することで、将来、より大きな何かを得ようとすること、と言い換えてもいいかもしれません。
■生き残れる人は生き残れる企業と同じものを持っている
生き残れる企業の条件は、「構造的に強靭」であること。「高い付加価値」、「圧倒的な競争優位性」、「長期的な潮流」の3つの要素を満たしていることである。
生き残れる人もまた、他人に対して付加価値(=人の役に立つ)を生み続けられること、競争優位性(希少な才能)と、長期的な潮流(=歴史観を持つ人になる)を備えていることが条件となる。
これは大変な時代が来た、我が子も自分も生き残っていけるだろうかと不安になる人も多いだろう。しかし奥野さんは、「なかなか痛快な時代が来たのではないか」と言い、若い人たちにこうエールをおくる。
「大変な時代だ」と受け身になっているだけでは、何も変わりません。
時代は変えられるのです。そのことを信じてください。
本書ではこのほか、経済や会社のしくみ、「価値を創造する」とは具体的にどういうことか、けた違いの大金持ちになる方法などについて、身近な例を用いてわかりやすく説明している。
高校生だけでなく、これから投資を始めたい人や、改めてお金について学び直したい人の入門書としてもおすすめの一冊だ。
奥野 一成さんプロフィール
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC)常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。
1992年京大法学部卒、ロンドンビジネススクール,ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。前著『ビジネスエリートになるための教養としての投資』(ダイヤモンド社)は5万部を超えるベストセラーになった。
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