「そのうち、ランチでも」→「月末あたり、ランチしませんか?」、「それはしないでください」→「それはこうしてください」、「つまらないものですが」→「気持ちばかりですが」......。
2つの言い方のうち、前者を使っている人が多数派ではないだろうか。ところが、前者は「よけいなひと言」、後者は「好かれるひと言」だという。無意識のうちに、相手をイラッとさせたり地雷を踏んだりする言い方をしているかもしれない。
大野萌子さんの著書『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)は、上司・部下、同僚、友だち、家族との関係がぐんとスムーズになる「言葉のかけ方」141例を徹底解説した一冊。昨年8月に刊行され、現在16万部突破のベストセラーとなっている。
「悪気はなかったのに、ちょっとしたひと言で相手を不機嫌にさせてしまった」「よかれと思って言ったのに、傷つけてしまった」......。
これらは、官公庁や企業などで年間150件以上の講演・研修を行い、2万人以上の社会人にコミュニケーションの指導をしてきた大野さんによく寄せられる声。相談される悩みの実に9割が、人間関係に関するものだという。
「言葉というのは怖いもので、使い方を一歩間違えると人間関係にヒビが入ったり、取り返しがつかなくなったりすることもあります」
誰しも一度や二度はこうした苦い経験があるだろう。ただ、もっと怖いのは「相手をイラッとさせることを言っている自覚がない人」。
「自分では気づかないまま、『マイナスの口癖』が習慣化していて、周囲との人間関係を築くことができず悩んでいる人がとても多いのです」
ハラスメントの行為者(加害者)になりやすいのも、無意識のうちに「よけいなひと言」を口にしているタイプなのだそう。
本書は、以下の15章に分けて「よけいなひと言」を「好かれるひと言」に言いかえるパターン141例を収録。
挨拶・社交辞令/お願いごと・頼みごと/断り方/気遣い/ほめ方/返事/自己主張/注意・叱り方/他人との距離/聞き方/謝罪の仕方/SNS・メール/マイナス意見/子育て/ハラスメントになりやすいNGワード
なぜこの言い方が「よけいなひと言」なのか、なぜこの言い方が「好かれるひと言」なのか。見開きで1つの例を取り上げ、4コマ漫画と大野さんが受けた相談事例をまじえてわかりやすく解説している。
「自分もこれで痛い目に遭いそうになった」「あの人が使っていてモヤッとした」など、自身と周りの言動を振り返りながら読んでいくこととなる。すると、自身もあの人も「よけいなひと言」を多用していたことに気づかされる。
「習慣となっている口癖はいつも、不意に口からこぼれます。それが、相手を追いつめ、自分に返ってくる言葉だったらどうでしょう。しかも、何気なく使っていたとしたら......」
まず、軽い挨拶のつもりで言ってしまいがちなこのひと言。
×「仕事はうまくいってるの?」 → ◎「最近、どう?」
前者は、「はい」or「いいえ」の答えを促す"クローズドクエスチョン"のため「×」。特に答えたくない話題の場合、相手を問い詰めて気まずい雰囲気に。後者は、相手が話題を選ぶことができる "オープンクエスチョン"のため「◎」。「どう?」という問いかけは「とても便利な言葉」という。
次に、メールでも会話でも丁寧にするつもりで使いがちなこのひと言。
×「させていただきます」 → ◎「いたします」
前者は「させてもらう」の謙譲語。「相手の許可をもらっていること」「恩恵を受けていること」の条件を満たす場合に使う。多用すると恩着せがましく感じられるため「×」。自分の行為を伝える場合、「いたします」「ます」が「◎」。「させていただく=丁寧な言い回し、相手をたてる表現」というのは「間違った認識」という。
本書を読んで、「配慮のつもりが逆効果だった!」とショックを受けるかもしれない。ただ、これ以上「言い方」で損をしないためにもぜひ読んでおきたい一冊。「よけいなひと言」→「好かれるひと言」への言いかえができるかどうかで、今後の人間関係が変わってきそうだ。
■大野萌子さんプロフィール
一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事。法政大学卒。産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。長年にわたる企業内カウンセラーとしての現場経験を生かした人間関係改善スキルが得意。メディア出演多数。東洋経済オンライン2019ロングランヒット賞を受賞。著書に『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー携書)、『言いにくいことを伝える技術』(ぱる出版)など。
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