「いまさら人に聞けない。これこそ学校で勉強しておきたかった！」と、大人になって思うことはよくある。お金もその一つ。お金との上手な付き合い方を体系的に学ぶ機会は、なかなか得ることができない。
そこで紹介したいのが、テレビやラジオで活躍中の作家・経済ジャーナリストである渋谷和宏さんの著書『知っておきたいお金の常識』（角川春樹事務所）。本書は「コロナ禍を乗り切るための、お金との上手な付き合い方をやさしく例示した実践的な入門書」である。
本書は「ビジネスパーソンにとどまらず、主婦や学生の方も含めて幅広い層の人たちに届けたい」という思いから生まれたという。ただ、どうしてもお金の説明には数字や耳慣れない言葉が付きもの......。
この問題を解決するべく、本書は「物語」を活用している。
「一話完結のミステリーには毎回、お金のことで悩んだり迷ったりしている等身大の人物が登場します。ぜひ彼らの身になって、お金との付き合いの難しさや解決法などの『勘所』を体感してください」
主人公は、天ノ川夫妻。夫はマネー誌の編集者兼記者。妻はファイナンシャルプランナー。夫妻は、自分たちの身の回りで起こるお金のミステリーを解き明かしていく。
本書は、【お金の基本】【お金の増やし方】【お金の未来】の3部構成。全17話を収録し、各話の終わりに「解説」ページが付いている。とっつきやすい「物語」から入り、「解説」を読んで理解を深める、という流れだ。
パート1【お金の基本】
第1話 「老後にいくら必要」は意味がない 年金に頼れない時代の「自分視点」
第2話 お金を貯める基本中の基本は「七パーセントルール」を守ること
第3話 五、六十代で蓄えがなくても大丈夫 人生百年時代の発想・計画でお金をつくる
第4話 明日の株価は誰にも予測できない。運用資産のことを三年間忘れてみよう
第5話 日本はもはや金持ちの国ではない 外貨・外債・外国株での運用を考えよう
第6話 誠実さを大切にし、お金は合理的に使う 億万長者の意外な素顔に蓄財のヒントが
パート2【お金の増やし方】
第7話 利子が利子を生む未来への贈り物 「複利」の利点を積立預金で最大限活用
第8話 貯蓄額一千八百十二万円超はリスクもOK 一割から二割を株や投資信託に回そう
第9話 デフレとインフレで異なる合理的な行動 物価上昇分以上の利回りを狙おう
第10話 停滞が続く日本の円だけでの運用は危険 高利回りの外貨に目を向けよう
第11話 投資のリスクを分散する「国際分散投資」 まずは投資信託を検討してみよう
第12話 リスクを減らしたい人は積立投資を 運用結果に一喜一憂しなくなるのも魅力
パート3【お金の未来】
第13話 コロナ禍で加速するキャッシュレスの普及 私たちの生活や仕事はどう変わるのか
第14話 中央銀行やフェイスブックも発行を計画 決済手段へと広がり始めた仮想通貨
第15話 仮想通貨の画期的技術ブロックチェーンが決済や取引、私たちの社会を変え始めた
第16話 バブルはいつかまた必ず起きる 資産価格上昇が陶酔を生むメカニズムとは
第17話 「時間」が「お金」になるコトコト交換 キャッシュレスの次は「お金が消える？」
ここでは第2話の「七パーセントルール」を紹介しよう。
一人ずつ、一世帯ずつ、収入やライフスタイル、価値観は異なる。しかし、お金を貯める基本中の基本は、「七パーセントルール」を守ることだという。
「『収入のうち毎月、少なくとも七パーセントを残すように生活を見直し、支出を管理して、リスクの低い金融商品で運用する』のです。一般的な収入の二十～四十代の世帯ならこれだけで老後の蓄えは十分に残せるでしょう」
早速、支出の見直しをしてみよう。とりわけ高い確率で無駄が見つかる項目は、「会費」「サブスクリプション（定額課金）サービスの支払い」「スマホなどの通信費」の3つだという。1と2は「二カ月以上、利用していない」場合、即やめるようアドバイスしている。
お金に無頓着な者としては、身の引き締まる思いがした。本書は基本のキに始まり、お金にまつわるありとあらゆるテーマがズラリ。読者層を限定しない「お金」の教科書のような一冊だ。
■渋谷和宏さんプロフィール
1959年生まれ。神奈川県出身。作家、経済ジャーナリスト、評論家、大正大学表現学部客員教授。日経BP社では、経済記者としてマクロ経済、企業戦略、環境問題などを担当。「日経ビジネス」副編集長就任後、「日経ビジネスアソシエ」を創刊し、初代編集長として実売10万部超の雑誌に育てる。2014年日経BP社を退社、独立。現在は様々な経済テーマで執筆活動を行う一方、テレビ、ラジオでコメンテーターを務める。年間100本近い講演活動も行う。
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