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人はいつから大人になるの?

空飛ぶくじら

   アート、エンタメ、アニメ、マンガの4部門において、優れた作品を表彰する「文化庁メディア芸術祭」。第24回マンガ部門の注目作は、新人賞を受賞した『空飛ぶくじら スズキスズヒロ作品集』(イースト・プレス)だ。

   本書は著者のスズキスズヒロさんのデビュー単行本。収録作品には、まっすぐで不器用な少年少女や大人たちが描かれている。

   表題作の「空飛ぶくじら」は作中にも登場する大瀧詠一さんのセカンドシングル『空飛ぶくじら』(1972年)から着想を得た短編だ。本曲の作詞家「江戸門弾鉄」は松本隆さんの変名。松本さんからは、「ごく稀に絵の具と筆で詩を書ける人がいる。スズキスズヒロもその一人だ」と本書に賛辞が寄せられている。

   以下に『空飛ぶくじら』のワンシーンを紹介する。

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画像は『空飛ぶくじら スズキスズヒロ作品集』より(イースト・プレス提供)

   5歳の愛娘、こはるから、誕生日プレゼントに「そらとぶくじら」が見たいとねだられた教授がとった行動とは......?

   また、SNSで拡散され大きな反響を呼んだ『木村先生』も収録。

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画像は『空飛ぶくじら スズキスズヒロ作品集』より(イースト・プレス提供)

   いつから人は大人になるの? 大人になるってどういうこと? 進路を決めかねて悩む高校3年生のカホに、木村先生がかけた含蓄のある言葉が胸に刺さる。

「人が決めたスケジュールなんか守らなくていいが、道を探すことはやめちゃだめだ」

   ほか、『銃声を削り出す』『TRAINSPOTTING』『TAXI DRIVER』『KIDS RETURN』を収録。大人も子どもも不器用ながらまっすぐに生きる様子が、あたたかいイラストとともに描かれる。

   著者のスズキスズヒロさんは、1992年生まれ。仙台市出身で、小学校3年生の時に「石ノ森章太郎のマンガ家入門」を読んでマンガを描き始めた。2016年、短編「TRAINSPOTTING」でデビューを果たし、2019年、初の作品集『空飛ぶくじら』(イースト・プレス)を刊行。マンガ執筆のほか、仙台文学館の企画展でポスター・展示用イラストを手掛けるなど活動は多岐にわたる。

 文化庁メディア芸術祭のウェブサイトには、島本和彦さんによる贈賞理由が掲載されている。

「味のある絵柄と、バラエティー豊かなアイデアの短編で構成されている。心温まる......時にはひやっとさせられるものも挟みながら、人と人とが紡ぎ出す忘れられない人生の1ページを描き出している。どのキャラクターにもそれぞれの生き方、生きざまがあり、愛すべき一個性としてきちんと表現されているのが良い。大きな事件が起こるわけではないが、それぞれの人物がリアルに描かれているためどのエピソードも十分に一大事な感がある。作者の人生経験の豊かさや人を見つめる温かい視線を大切に、今後も作品をつくっていって欲しい。」
出典:文化庁メディア芸術祭[受賞作品展・コンテスト]ウェブサイト

   道に迷い、悩んだ時に読むとほっとする。進学や卒業、就職など新たな道へと踏み出す人にもおすすめの一冊。


※画像提供:イースト・プレス

 
  • 書名 空飛ぶくじら
  • サブタイトルスズキスズヒロ作品集
  • 監修・編集・著者名スズキスズヒロ 著
  • 出版社名イースト・プレス
  • 出版年月日2019年12月 5日
  • 定価990円(税込)
  • ISBN9784781618401

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