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明日死ぬとしたら、思い残すことは?

明日死んでもいいための44のレッスン

 60万部を突破した『家族という病』をはじめ、『家族という病2』『極上の孤独』『年齢は捨てなさい』など、発表する著書が次々と話題を呼んでいる下重暁子さん。

 最新刊『明日死んでもいいための44のレッスン』(以上、幻冬舎新書)は、下重さんが日頃から実践している「思い残すことなく旅立つための極意」を初披露した一冊。

 「『死』は常に突然やってくる。思い残すことなく旅立つには、それなりの『下準備』が必要です」

 てっきり終活の本かと思ったが、中身は読者の年齢層を限定するものではなかった。「死の下準備」は、そのまま「生き方」につながっていた。

いつ死んでも不思議ではない

 下重暁子さんは、早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。女性トップアナウンサーとして活躍後、フリーに。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。公益財団法人JKA (旧・日本自転車振興会)会長などを歴任。現在は日本ペンクラブ副会長、日本旅行作家協会会長。

 本書は、「パート1 『死』をよく知ると、怖くなくなる」「パート2 明日死んでもいいための44のレッスン」の2部構成。

 タイトルからして「パート2」がメインに思えるが、良い意味で裏切られた。10年に及ぶ大恋愛、人生の転機での誤ち、身近な人の死、死生観などを綴った「パート1」の読み応えが半端ではない。

 ここ最近、「とびきり元気で気持ちのいい友人達の死」を立て続けに知ることとなった下重さん。コロナ禍も重なり、「人はいつ死んでも不思議ではないのだ」と心から思ったという。

 「(死への)覚悟さえできていれば、生き方も変わってくる。死に方は生き方、生き方は死に方。生まれた時から死への行進は始まっているわけだから、人は生きてきたようにしか死ねない」

 死は「生の延長線上」にあり、「生の終着点」。明日死んでもいいためには、「今をいかに生きるか」と自分自身に問い、「今日しっかりと生きておかなければならない」としている。

早世した少女の記憶

 下重さんは、現在84歳。まさかこれほど長生きするとは、本人もまわりも思っていなかったそうだ。

 小学校2年生の時、当時「死病」といわれていた結核と診断された。戦争が激しくなり、奈良の信貴山上にある旅館で隔離生活を送ることに。1日4回熱を測り、1日置きに医者が来て注射を打ったが、快方に向かうことはなかった。

 ところが3年生の夏に敗戦を迎え、もはや誰からも特別扱いされず、喰うや喰わずの生活の中、もとの学校にもどったら治ったという。子どもの頃に体が弱かったとしても、早死にするとは限らない。逆もまた然りである。

 下重さんが学校にもどった頃、仲よしだった近所の少女が白血病で亡くなった。体の弱い下重さんをいたわってくれ、学校の行き帰りもたいてい一緒。結核だった下重さんを他の子が避けても、彼女だけは一緒に行動してくれた。

 「私の中では、彼女は今も死んでいない。夢の中で手をつないで、二人で学校に行っている」

 なぜその少女のことを忘れないのか。それは「早世してしまったから」と考えている。自分の大好きな人が、まだ死が何かもわからない頃に「急に目の前から消えた」。だからこそ、「その面影が克明に浮ぶのだ」と。

 「早くに亡くなった人は、決して不幸ではない。人の心の中に自分の姿を刻みつけ、生きていた時以上に印象深く、生き続けるのだ」

 読者は、これまで経験してきた身近な人の死を想うことになるだろう。読んでいて、たしかにそうだなと、つらい記憶に光が差す感じがした。

転機には乗ってみるべし

 本書は、人生の大先輩からの生きるヒントに満ちている。

 たとえば「誰だって一度や二度、自分で選択せずにシマッタと後悔することはある」として、自身のにがい経験を披露している。

 下重さんが28歳の時、民放から「昼のワイド番組の初の女性キャスターに」という話が舞い込んだ。「今が翔ぶ時」とわかってはいたが、当時惚れに惚れていた恋人の意見に従い、断った。自分で決断せずチャンスを逃したことは、ずっと後まで尾を引いたという。

 「あの時ああしておけば......とか、こんな道もあったのに......などと、うだうだ考えて鬱になるより、『あの時決めたのは私』とさえ思えれば(中略)自分で納得することができるのだ」

 今がチャンス、今が転機、と気づける場合とそうでない場合があるが、下重さんがこれまでをふりかえったところ、「だいたい10年ごとに大きな転機」が訪れ、「その予兆を入れると、8年ごと」なのだとか。

 「耳を澄ましていると、聞えてくる。心の声が呟いている。もうじき、とんでもないことが起きる。それがよいことか悪いことかはわからないが、転機であることには違いない」

 思わぬ展開が待ち受けているかもしれず、とにかく「翔んでみる」ことをすすめている。「転機には乗ってみるべし」。

 ここでは「パート1」からいくつか紹介したが、「パート2」では「常に身ぎれいにしておく」「自分の死を知らせる連絡リストを作る」「完璧主義をやめる」など、具体的な「死の下準備」から生き方まで、さまざまなレッスンを展開している。

 夢中になってあっという間に読み終えた。下重さんのいう「明日死んでもいい」は、あきらめでも投げやりでもない。死を考えることが、よりよく生きることにつながるのだと教わった。本書は一読の価値がある。



 


  • 書名 明日死んでもいいための44のレッスン
  • 監修・編集・著者名下重 暁子 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2021年1月25日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・200ページ
  • ISBN9784344986107

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