本を知る。本で知る。

下重さんも「ひとり」でいることと格闘してきた

極上の孤独

 本書『極上の孤独』(幻冬舎新書)は、このところ新書部門で売り上げランキングのトップを走っている。「一人の時間が劇的に変わる、新・孤独論」「孤独の効用を語りつくす」。本書の広告ではそんなうたい文句が並ぶ。

「助け合い」や「きずな」が強調されている

 10年ほど前、「無縁社会」というキーワードがはやった。家族、親類、友人・知人との縁がなくなり、孤独のまま死を迎える人が増えているといわれた。「きずな」の喪失が社会問題になった。その後、東日本大震災もあって、「助け合い」の大切さや、「きずな」が強調された。しかも、インターネットでなんでも「つながる」社会がくるかのように言われている。そんな雰囲気のなかでも、なお、ひとりぼっちで不安な人は多い。

 しかし、本書は、こう訴えるのである。

 「『孤独死はかわいそう』『できれば孤独死は避けたい』と耳にすることがある。ほんとうにそうだろうか。最期が他人から見て孤独死であったとしても、本人とっては充実した素晴らしい人生だったかもしれないのである」

 著者の下重暁子さんは本書によると今年81歳。NHKアナウンサー、民放キャスターを経て、文筆活動に入り、エッセイ、評論、ノンフィクションなど多彩な作品を発表。家族のあり方を問うた『家族という病』はベストセラーとなった。小泉政権での特殊法人改革で、当時の日本自転車振興会会長に抜擢され話題になった。

 そんな下重さんが、自らの「孤独論」を大展開しているのが本書で、リズムよくたたみかける「下重節」は、ファン必読だろう。

2人の人物のこと繰り返し出て来る

 本書は5章から成り立つ。「なぜ私は孤独を好むのか」「極上の孤独を味わう」「中年からの孤独をどう過ごすか」「孤独と品性は切り離せない」「孤独の中で自分を知る」。

 それぞれに10項目程度の小見出しがついている。全体にストーリーがあるわけではなく、どこからで読むことができる、便利なつくりだ。「孤独上手になるための『一人練習帖』」「だから一人は面白い」「孤独でないとカンが鈍る」など、役に立ちそうなところのページをめくる。

 そういえば同じく新書が好調な五木寛之さんの『百歳人生を生きるヒント』(日本経済新聞出版社)でも、「じっくり孤独を楽しむ」「俗世間にありながら出家の心をもつ」など、「孤独」が肯定的にとらえられていたことを思い出した。

 長年のメディア経験から下重さんは、永六輔さん、小沢昭一さんら多くの有名人と交流があり、その人たちとの思い出もあれこれも語られる。野際陽子さんはNHKでの一年先輩だったそうだ。

 下重さんは「孤独を愛す」と繰り返しおっしゃる。「孤独の愛し方」について、下重スタイルのガイドブックのようなことになっているのだが、ただ、単なる説教ではないのは、下重さん自らの「もがき」も描いているからだ。

 2人の人物のことが、数か所で繰り返しでてくる。一人は元恋人。大恋愛の末結ばれることはがなかったが、忘れられない心情がにじみ出る。

 いま一人は、お母さん。看取りの経験を通しての母との葛藤が語られる。下重さんもやはり「ひとり」でいることと格闘してきたのか、とほっとするのだ。

  • 書名 極上の孤独
  • 監修・編集・著者名下重暁子 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2018年3月30日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書判・ 181ページ
  • ISBN9784344984936
 

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?