ワークマンは1980年、群馬県伊勢崎市に「職人の店・ワークマン」として開業し、フランチャイズで店舗を広げてきた会社だ。
2012年に土屋嘉雄会長(当時)の甥、土屋哲雄氏(現・専務)が入社、常務情報システム部・ロジスティクス担当になってから快進撃を続けている。
東京大学経済学部を卒業後、三井物産でスタートアップや新規事業を次々と起こし、定年まで全うした土屋哲雄氏。そのユニークな経営方針を明かしたのが、本書『ワークマン式「しない経営」』(ダイヤモンド社)だ。
競争の激しいアパレル業界だが、街着としても使えるカジュアルウェアやレインスーツは機能性が高く、普及価格の商品は、4000億円の空白市場であることが分かった。ここに狙いを定め、新業態の「ワークマンプラス」として18年に出店した第1号店は、1億2000万円の年間売り上げ目標をわずか3か月で達成した。商品は既存のワークマンと全く同じだったが、店の外観や売り場を変える「空間戦略」が成功した。
「とにかく競争したくない会社」だという。土屋氏はワークマンプラスを出店したときから「ユニクロアウトドア」や「ユニクロスポーツ」が現れたら撤退すると決めていたという。フランチャイズがほとんどだが、出店場所を本部が決める。コンビニのように店舗同士を競合させないのが大方針だ。
ワークマンプラスの成功は競争戦略面から語られることが多いが、それは半分だという。もう半分は、社員が同意し気持ちよく仕事をしてくれる状況を作れたこと。
ワークマンで著者が実践したのは「しない経営」の定着化だ。さまざまな「しない」ことがある。まず、「社員のストレスになることはしない」。これには小項目があり、「残業しない」「仕事の期限を設けない」「ノルマと短期目標を設定しない」の3つ。「無用な干渉をされないことで、自分の時間を有効に使えるので、ストレスフリーで売り上げを上げ、自分のペースで楽しく働くことができる」と説く。
それまでコミュニケーション力が弱いと評価が低かった従業員が、じつは数字に強いことでメキメキ評価を上げていった例もあるという。「とりわけ『頑張る』ことはしないどころか、禁止だ。それでも業績は10期連続最高益を更新中」だ。
2020年3月期は、チェーン全店売り上げ(ワークマンとワークマンプラス)が前年同期比31.2%増の1220億円。営業利益は同41.7%増の192億円、経常利益は同40%増の207億円、純利益は同36.3%増の134億円だった。「しない経営」が業績を牽引している。
BOOKウォッチでは、『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』(日経BP 発行、日経BPマーケティング 発売)を紹介済みだ。
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