読むべき本、見逃していない?

たくさんのアイドルの武器になるように/深井剛志&姫乃たまインタビュー(2)

 地下アイドルが遭いやすいトラブルと対処法をまとめた『地下アイドルの法律相談』を執筆した深井剛志さん、姫乃たまさんへのインタビュー。

 第1回「多くのアイドルを悩ませる「やりがい搾取」/深井剛志&姫乃たまインタビュー(1)」では、アイドル業界に蔓延する問題や、解決するための術について聞いた。

 第2回は、執筆のポイントや、深井さん、姫乃さんがのぞむアイドル業界のあるべき姿をお届けする。

写真は、『地下アイドルの法律相談』著者の深井剛志さん、姫乃たまさん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

たくさんのアイドルの武器になるように

―― 本書は地下アイドルが遭いやすいトラブルと対処法をまとめた内容です。執筆にあたって意識したところを教えてください。

深井 たくさんのアイドルに読んで欲しかったので、法律の仕組みを分解して易しい言葉で説明しています。慣れない作業だったので苦労しましたね。正直、いちばん頭がすり減りました(笑)。
姫乃 章の頭では、西島大介さんのマンガが入っているので、より分かりやすくなっていますよね。

―― 姫乃さんが執筆されたコラムは、地下アイドルの経験に基づくものでしたね。

姫乃 私がアイドル業界へ入ったとき、「こんな言葉をかけてくれる人がいたら良かったな」という気持ちを込めて書きました。
 例えば、「アイドルとして活動することが精神的に辛くなった時、辞めるか続けるか二択で選択しがちだけど、お休みを取っても良いんだよ」とか。見落としがちなことを掘り起こして、気持ちの面で寄り添うことができるように意識しました。
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写真は、『地下アイドルの法律相談』著者の姫乃たまさん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

―― 特に、「精神的にも肉体的にも負担をかけてくる人は切り離してしまいましょう」と伝えているコラムは印象的でした。

姫乃 深井先生が「やりたくない仕事はやらなくて良い」ということを法律の仕組みに則って解説してくださっているパートがありますが、それを読んだ時に「確かにそうだな」と思ったんです。
 業界に長く浸かっていると感覚が鈍るところもあるのですが、「アイドルも普通の人間だし」と思えたことに後押しされて書けたコラムもありました。
深井 実際、Twitter上には「姫乃さんのコラムに勇気づけられた」というアイドルの子も居ましたよね。優しさが溢れている姫乃さんのコラムは見どころです。
写真は、『地下アイドルの法律相談』著者の深井剛志さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

―― 本書を企画した編集担当の大野さんが意識したことはありますか。

大野 最近は積極的に本を読まない子も多いので、深井先生の解説や姫乃さんのコラムが最大限に活きるよう、漢字にフリガナを振ることにしました。

―― ほとんどの漢字にフリガナが振られていて驚きました。

大野 それから、「2,000円を超えたら地下アイドルは買えない。1,800円がギリだね」と言う吉田豪さんのアドバイスをもとに、社内で検討を重ね、本体1,600円でご提供できるようにしました。
写真は、『地下アイドルの法律相談』(日本加除出版)

運営にも読んで欲しい 業界全体の意識底上げが狙い

―― さまざまな工夫を経て、地下アイドルの手に届きやすく読みやすい本になっているんですね。

深井 もちろん地下アイドルの子に広く届いて、知識を武器として身につけてもらいたいですが、それだけでは問題解決に至らないなとも思っています。

―― と言うと?

深井 本の中で僕が書いたことは、あくまでも教科書的な解決方法なんです。
 例えば、「契約書の内容をきちんと確認しましょう」とか「困った時はすぐに弁護士に相談しましょう」とか。けれど、実際にアイドル自身が現場で応用することは難しいのではないかなと。
姫乃 そうですね。運営に対して「契約書の内容を詳細に確認させてください」とか「弁護士に相談してからお返事します」と言える子は少なそうですね。
深井 そのためには、運営側にも本書を読んでもらいたいと思っています。
 特に今、アイドル運営に若い人が参入することも多いのですが、法律はもちろん、経営知識がない人も多いと思うので......。
写真は、『地下アイドルの法律相談』著者の深井剛志さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

―― 運営側に読んでもらうことで、業界全体の意識底上げに繋がりそうですね。

深井 はい。人権配慮に重きを置いた運営者として認知されるようになれば、口コミで良い人材は入ってきますし、スターが育ちやすい環境も整うと思います。運営側のメリットも十分にあります。
姫乃 同時に、ちゃんとした運営かどうか見分けるために、やはり地下アイドル自身にも読んで欲しいと思いますね。
 「ステージに出ることができる」とか、目先の夢だけに固執せず、将来的に安心して過ごすことができる場所かどうか見極める武器として、この本を読んで知識を身につけて欲しいなと思います。

―― 最後に、地下アイドルの子たちへ向けて姫乃さんからメッセージをお願いします。

姫乃 この本をきっかけに、悩んでいる子の話を聞けたらいいなと思っています。
 このインタビューでも伝えたように深井先生や私がいるので、何か困ったら連絡してきてください。



■プロフィール

深井剛志(ふかい つよし)
弁護士(東京弁護士会)。「困っている人、弱い立場にいる人の力になりたい」という想いから、弁護士を志す。「何よりも依頼者のことを考えた事件処理をすること」をモットーに、労働問題に強い旬報法律事務所で活躍。これまでにも地下アイドルの契約を巡る事件を数多く担当。また、地下アイドル関連の事件についての記事の執筆やラジオ出演等のメディア露出により、地下アイドル当事者から直接相談が舞い込むようになり、地下アイドル業界の問題に最も詳しい弁護士の一人となっている。




■プロフィール

姫乃たま(ひめの たま)
1993年2月12日、東京都生まれ。16歳よりフリーランスで始めた地下アイドル活動を経由して、ライブイベントへの出演を中心に、文筆業を営んでいる。音楽ユニット・僕とジョルジュでは、作詞と歌唱を手掛けており、主な音楽作品に『First Order』『僕とジョルジュ』等々、著書に『職業としての地下アイドル』(朝日新書)、『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー)がある。


BOOKウォッチ編集部 ムカイ)

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