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「会社と話したい」と言ってもらえるように/サンミュージック・相澤正久社長インタビュー(2)

すごいぞ! はたらく知財

 長年にわたり多くの有名なタレントや歌手、お笑い芸人を輩出してきた株式会社サンミュージックプロダクション(以下、サンミュージック)の相澤正久(あいざわ・まさひさ)社長と、『すごいぞ!はたらく知財』(晶文社)の著者、萩原理史(はぎわら・まさふみ)さんのインタビュー。

 第1回「祐実ちゃんは将来、どんなタレントさんになりたい?」では、芸能プロダクションの仕事と知的財産権(以下、知財)の関係性について聞いた。

 第2回は、コロナ禍における芸能プロダクションの対応や、社内で展開している知財教育プログラムなどを聞く。

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サンミュージック 相澤正久社長(撮影:BOOKウォッチ編集部)

萩原 昨年3月頃から新型コロナウイルスで日本全体が大混乱に陥りました。エンタメ業界は、どのような影響を受けたのでしょうか。

相澤 人が見に来てくれてはじめて成立するエンターテイメントの世界において「人が集まること自体」に自粛要請がありました。社会全体の最適を考えればやむを得ないことです。
 しかし、事実として我々の活動も一部は止まってしまいました。
 私は、エンタメ業界、古典芸能も含めて全て文化と思っていますので、集客や興行ができない状況は文化の後退にも繋がると危惧しています。

 サンミュージックとしては、例えば、毎年、学園祭へ引っ張りだこになっていた芸人も今年は出番がなくなっています。

萩原 学園祭といえば、学生にとってはタレントに会える楽しみも大きいと思います。

相澤 そうですね。無観客で行ったり、リモートで開催したりと新しい形態は出てきましたが、目の前の人に楽しんでもらうことはタレント自身にとっても大きな力になるものです。
 今は限られた配信ツールで一方的にしか芸が披露できていない状況で、タレント自身にとっても精神的負担が増えている場合もあると思います 。
サンミュージック 相澤正久社長(撮影:BOOKウォッチ編集部)

会社はあなたを気にしているよ。ずっと見守っているよ

萩原 第1回のインタビューでは、メンタルケアも芸能プロダクションの仕事とおっしゃっていました。

相澤 なかなか難しいことだとも思いますが、タレントたちには、何かあったときには、まず、「会社と話したい」と言ってもらえるように、サンミュージック社員一同で心がけています。

 そのためには、普段から「人に悩みを打ち明けると楽になるよ」と言ってあげること。また、悩みを打ち明けてくれた時には、「こうすれば良くなると思うよ」というアドバイスをするようにしています。そして、常に、会社はあなたを気にしているよ。ずっと見守っているよ。ということを感じてもらうことが大切です。
 なんでも相談できるような信頼関係を作ることも、芸能プロダクションの大事な仕事のひとつなのです。

萩原 一方で、ファンはどのような形で応援するのがベストでしょうか。

相澤 タレントがSNSで発信しているものに対して「いいね」や、「RT」で広めていただけるだけで応援になります。間接的にでも反応が返ってくると嬉しいものです。スマホひとつでできるので、ぜひお願いします。
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サンミュージック 相澤正久社長(撮影:BOOKウォッチ編集部)

コロナ禍でも知財を武器に活躍できる

萩原 このような危機のときに知財は役に立つのでしょうか?

相澤 今、ネットでタレントの作る作品がたくさん売れるケースも多いので、そういったときに、知財に基づいて二次使用の分配をきちんと手配してあげることは大事なことです。
 我々が積極的に二次使用をしてもらいやすくして、タレントへの分配率を増やしていく努力をすることで、タレント自身も創作に集中できて、かつ、利益も守ることができると思っています。

 また、YouTubeに進出し、流行りの歌を歌ってファンを増やすケースも出てきています。その中で、きちんと著作権等を守りながらタレントとしての価値感を上げていけるようにサポートしてあげることが必要だと思っています。

萩原 芸能プロダクションはタレントがもつ権利を守りながら、タレント自身も他人の権利を侵害しないように理解を促すのですね。

相澤 サンミュージックでは、社内で知的財産に関する教育プログラムを展開していて、タレントに対しても「ここは、この権利に触れるので気をつけなさいね」というアドバイスをしています。YouTubeなど、新しいことに挑戦する機会が増えているので、その点は役立っていると思います。
サンミュージック 相澤正久社長(撮影:BOOKウォッチ編集部)

必要な知識は、シチュエーションで教えてあげることが大事

萩原 社内だけでなく、タレントを学校に派遣し、知財を啓蒙する活動もされているそうですね。

相澤 城西国際大学に「現代演芸学」という講座を持っています。
 講座では、サンミュージックに所属しているお笑い芸人が「芸能界では、こういうことがあるよ」というリアルな話を講義しています。

 ポイントは、最初から全ての権利を教えるのではなくて必要な状況に合わせて教えてあげることが大事です。
お子さんたちの教育とも一緒だと思っていて、頭で教えてあげるより都度、その場で具体的に教えてあげることで、知識は身につくものだと思っています。
 特に、さまざまな可能性を持った子どもたちが、その才能を発揮しようとしたとき、知財は可能性や才能を利益につなげてくれたり、あるいは、他人の権利侵害を防止するガイドラインとして基準を示してくれたりします。
 気軽に世界へ向けて情報が発信できてしまう時代です。もはや、知財の知識は誰でも標準装備しなければならないものだと思うのです。

萩原 貴重なお話、ありがとうございました。

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『すごいぞ! はたらく知財』(晶文社)

 今回、相澤社長にお話いただいた芸能プロダクションの取り組みをはじめ、クリエイティブなお仕事と、それぞれの知財がどう結びついているのかについては、相澤社長も登場する書籍『すごいぞ! はたらく知財』(晶文社)で詳しく紹介しています。ぜひ、参考にしてください(荻原)。

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サンミュージック相澤正久社長(左)、著者の萩原理史さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

相澤正久(あいざわ・まさひさ)
株式会社サンミュージックプロダクション代表取締役社長。1971年6月米国大学卒業、太平洋クラブ、京王観光を経て、'79年株式会社サンミュージック企画に入社。'95年株式会社サンミュージックプロダクション取締役副社長に就任し、'96年からお笑い部門プロジェクトGETを立ち上げ、お笑い芸人の育成に力を入れる。'04年12月に代表取締役社長に就任。

萩原理史(はぎわら・まさふみ)
2007年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)に入社。同社にて、映像産業を中心としたメディア・コンテンツや芸術文化政策等にかかわる調査研究業務に携わる。



BOOKウォッチ編集部 ムカイ)


  • 書名 すごいぞ! はたらく知財
  • サブタイトル14歳からの知的財産入門
  • 監修・編集・著者名内田朋子、萩原理史、田口壮輔、島林秀行 著、桑野雄一郎 監修
  • 出版社名晶文社
  • 出版年月日2019年11月30日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判変形・253ページ
  • ISBN 9784794971524
 

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