ネットは何でもやりたい放題、無法地帯になっている――しばしばそう指摘されている。一方で、慎重に対処し、これぐらいは大丈夫だろうと思っていても、アウトになるケースもある。
本書『ビジュアルデザイン発注時に知っておきたい! 著作権のキホン トラブルを未然に防ぐ対策Q&A』(第一法規)は、タイトルにもあるように、特に「ビジュアルデザイン」を巡る諸問題に論点を絞ったものだ。
著者の石川正樹さんは弁護士・弁理士。著作権や特許について詳しい。トラブルを未然に防ぐノウハウが、多数の事例を挙げながらQ&A形式で解説されている。
第一章「知ってほしい! 発注時よくあるトラブル」では40のケースが登場する。「最近みかける著作権フリーの写真は商用に使っても大丈夫か?」「社内のミーティング用資料にデザイン雑誌のコピーを配布しても良いか」「江戸時代の浮世絵の模写作品を商品パッケージに使用した」・・・。すぐに答えられるなら、著作権通と言えるだろう。
「納品されたデザインが気に入らない。契約を解除したい」「お金を払ったんだから、マスコットデザインの著作権はこちらのものですよね?」「従業員が業務で作ったキャラクターの著作者は誰?」なども、ありがちな疑問だ。
「広告の売り文句をパクられた」「ライバル会社が当社そっくりな販促ムービーをショッピングサイトに掲載している」「当社のロゴマークにそっくりなデザインをインターネットで見つけた。削除してほしい」「類似品の販売をやめさせたい」なども日常的に起きていることだろう。
こうしたトラブルは、かつてはプロ同士の内輪もめにとどまっていた。ところがネット社会の進展で、状況が変わってきた。いわば著作権についてよく知らない素人が、生半可な知識で著作権によって仕切られたプロの世界に入り込んできた。
「個人で画像や文章、動画などを作って簡単に発信し、誰でも表現者になれるからこそ、著作権という権利は非常に身近なものになり、それゆえにトラブルも増え続けています」と著者は警告する。
冒頭の「著作権フリー素材」については次のような注意を呼び掛けている。
・著作権フリーというだけでは利用方法と条件が分からない。
・その表現物が、掲載者が創作したものかどうかも分からない。別の誰かの著作物を無断で転載しているのかもしれない。
本書は第2章で「トラブル防止の基礎知識」と題して著作権法について説明している。また最後に「ワードサーチ」という索引も設けて、気になる用語から逆引きできるようにしている。仕事でデザインに関係している人はもちろん、個人でネット発信している人は、類書も含めて、この種の本を一度見ておくと良いかも。基本的なことを再確認できる。
本欄では関連で『撮ってはいけない』(自由国民社)、『その「つぶやき」は犯罪です』(新潮社)なども紹介している。
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