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「働く大人はかっこいい!」510種の職業を徹底ガイド

決定版 日本の給料&職業図鑑

 村上龍さんの『13歳のハローワーク』(幻冬舎)が2003年に刊行され、話題になった。当時、小中学生の頃に戻って読みたいと思ったものである。なるべく早いうちから、世の中にどんな職業があるのかを知っておいた方がいいだろう。ある程度狙いを定め、アンテナを張り、情報収集しておくことは、進学、就職の際に必ず役立つはずだ。

 そこで紹介したいのが「給料BANK」による本書『決定版 日本の給料&職業図鑑』(宝島社)。将来の参考になる日本の職業510種について、「初任給」「年代別平均給料・給与」「生涯賃金」「仕事内容」「その職業へのつき方」をゲーム攻略本風に解説している。就職・転職を考えている人はもちろん、子どもにも読んでほしい一冊だ。

累計40万部突破のシリーズ「集大成」

 著者の「給料BANK」とは、2014年6月にオープンした情報ポータルサイト。さまざまな職業の給料や仕事内容、就労方法など、職業にまつわる情報をRPG風イラストとともに紹介している。著書に『日本の給料&職業図鑑』『日本の給料&職業図鑑 Plus』『女子の給料&職業図鑑』『日本の給料&職業図鑑 業界別ビジネスマンSpecial』『日本の給料&職業図鑑パーフェクトバイブル』(以上、宝島社)などがある。

 本書は、累計40万部を突破した「日本の給料&職業図鑑」シリーズ第6弾であり、就職・転職に役立つ人気ガイドの「集大成」という位置づけ。過去最多510種の職業とともに、「桃太郎電鉄」シリーズ、「ジョジョの奇妙な冒険」、「ドラゴンクエスト」などで有名なマンガ家の描き下ろしイラストも多数掲載している。

 また、本書を原案とする、お金をテーマにしたブロックチェーン連動トレーディングカードゲーム「Job Tribes」(ジョブトライブス)がリリースされるなど、盛り上がりを見せている。「Job Tribes」とは、プレイヤーが本書に掲載された各職業イラストが描かれたカードでバトルし、ゲームを職業にしてお金を稼ぐことができるものだという。

 「もしかしたら、今まで想像したこともなかった職業への興味が生まれたり、"天職"と出会うことができるかもしれません」

 「働く大人はかっこいい、そして子どもたちがかっこよく働ける未来のために......」

 本書は、オールカラーで文字の大きさもほどよく、早ければ小学校高学年から読めそうだ。各職業のイラスト、各職業を表すキャッチコピー、どれもインパクトがありとっつきやすく、解説も細かなところまで行き届いている。見応えも読み応えもある一冊となっている。

最も高額な「平均給料・給与」は?

 本書は、510種の職業を8つのchapterに分けて解説している。

chapter1 士業・コンサルティング系職業
chapter2 芸能・マスコミ・クリエイティブ系職業
chapter3 医療・介護系職業
chapter4 公務員系職業
chapter5 飲食・サービス・ファッション系職業
chapter6 IT系職業
chapter7 土木建築・体力・スポーツ系職業
chapter8 その他の職業

 なお、本書にある各職業の給料などの数値は、厚労省や人事院の実態調査、口コミ、求人情報の統計、年収を公開している上場企業のIR情報、国税庁が算出している民間給与実態調査などを参考に、「給料BANK」独自の視点で算出している。そのため、個人差、地域差があるものがほとんどだとしている。

 その上で、各chapterから最も高額な「平均給料・給与」を並べてみよう。月給は、プライベートバンカー100万円、YouTuber747万円、美容整形外科医140万円、総理大臣334万円、飲料メーカー社員44万円、トップアフィリエイター146万円、プロ野球選手1693万円、パイロット124万円。

 全体をとおして、この職業は聞いたことがなかった、最近はこんな職業が誕生したのか、この職業はこんなに収入があるのか......など、驚きの連続である。大人になっても社会の全体像までは見えていなかったのか、社会はこれほどまでに多様な職業から構成されていたのかと、勉強になる。

ユニークなキャッチコピー

 本書の読みどころの一つが、各職業を表すユニークなキャッチコピー。特に印象的だったものをいくつか挙げてみよう。

・「ご近所付き合い独特の感情が境界紛争の背景に隠れている」土地家屋調査士
・「恐ろしく早口だな! 私でなきゃ捕獲できんよ!」速記士
・「大人よりも子どもたちが稼ぐ『新時代』がはじまりました」YouTuber
・「一日10時間以上ゲームをする必要がある」プロゲーマー
・「可愛いは盛れるけど内面の可愛さは盛れないわよ」美容整形外科医
・「『なぜ?』を5回以上唱えなさい。そうすれば深みを知ることができる」小学校教諭
・「未来に巨大な足跡を残すには、プログラミングを知るがよい」ソフトウェア会社社員
・「専業主婦の情報網は諜報機関をも超える!」専業主婦

 これまで各職業像を漠然としたイメージで捉えていたが、型にハマらないキャッチコピーと解説を読んで、それぞれの仕事内容や存在意義をよりくっきりとつかむことができた。他にもおでん屋、忍者、レゴ職人......など、510種というだけあって職業というものをほぼ網羅している。Indexを眺めれば、気になる職業が見つかるだろう。なお、興味のない職業も含めて、本書は読み物として十分面白い。

 最後に、子どもの将来なりたい職業で近年上位にランクインしているYouTuberにふれておこう。YouTuberとして稼ぐには、再生回数と広告の表示回数が重要だという。実際は動画1再生につき平均0.02~0.2円の収入であり、「専業でやるにはかなり厳しい職業」としている。最近は「キッズYouTuber」と呼ばれる子どもたちがいて、親が撮影機材や衣装を揃えるなど、家族で撮影に励む家庭もある。評者はNHKの番組で観たが、子どもたちは収入より、動画を制作し、視聴者からの反応を得られることに喜びを見い出しているようだった。

 きっかけは何であれ、仕事に興味を持ったタイミングでぜひ本書を読んでほしい。社会に対する視野が広がり、仕事の選択肢を増やすことになるだろう。ちなみに、子どものころは、将来どんな仕事にも役立つ体力、基礎学力を養っておくことが最も重要であることは言うまでもない。

  • 書名 決定版 日本の給料&職業図鑑
  • 監修・編集・著者名給料BANK 著
  • 出版社名株式会社宝島社
  • 出版年月日2020年3月25日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数A5判・416ページ
  • ISBN9784299003355
 

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