内向的な人は損をすると思われがちだ。ところが本書『内向型人間だからうまくいく』 (祥伝社新書)によれば、そんなことはない、むしろうまくいくことが多いというのだ。自分の性格を内向的だと思って過剰に悩んでいる人にとっては励みになる。有難い本と言えるだろう。
著者のカミノユウキさんは1989年生まれ。神戸大学医学部保健学科卒業。神戸大学大学院保健学研究科修了。医療機器メーカーで働くなか、自分が内向型人間であることに気づき、独立。内向型な性格の人を対象としたオンライン講座や講演を行ない、SNSで内向型に関する情報を発信している。本書に掲載されている著者写真を見ても、がつがつした感じがない。
子どものころから社交的ではなく、友人や知人も多くないという。初対面の人と話したり、電話でやり取りしたりすることも苦手だという。
大学院を出て就職すると、先輩や同僚にエネルギッシュで社交的な人が少なからずいた。飲み会でも場を盛り上げてくれる。自分も社交的になろうとして努力してみたが、うまくいかない。自己嫌悪に陥った。
なぜあえて社交的になろうとしたのか。それは世の中に出回っているビジネス書や自己啓発本には外向型人間向けが多いからだという。一例として堀江貴文氏の『多動力』(幻冬舎)を挙げている。「すぐに始めてしまって、走りながら考えよう」「一晩10軒以上ハシゴしろ」などと書かれているそうだ。内向型人間にできることではない。
カミノさんは悟った。「私が自分の性格を嫌い、苦しんできたのは、『外向型であれ』という世間の価値観に流されてきたからです。内向型の人間は、内向型らしく生きればよいのです」と正直に語る。
本書は「第一章 内向型の性格は直さなくていい」、「第二章 内向型を知る」、「第三章 内向型人間が働きやすくなる方法」、「第四章 人間関係をスムーズにする方法」、「第五章 内向型を強みにする」、「第六章 自分を知り、自分を受け入れるために」の六章構成。
各章に「まとめ」が付いているのでわかりやすい。「第一章」では、「人間には内向型と外向型がいる。三人に一人は内向型」「内向型には内向型だけの強みがある」「外向型を真似ようとせず、内向型を受け入れよう」という具合だ。
医療関係の大学院を出ているだけあって、「第二章」では、「内向型の性格は生まれ持ったもの。後天的ではない」「内向型人間の特徴はいずれも『脳の神経経路が長い』『ドーパミン感受性が強い』『副交感神経が優位』という脳の作りに原因がある」など、医学生理的な分析もされている。
冒頭には「内向型診断テスト」も掲載されている。評者もチャレンジしてみた。30問のうち20個以上に該当すれば内向型だそうだが、25個も該当してしまった。
実社会をある程度経験した人なら、世の中には、いろいろなタイプの人がいることを実感できるはずだ。派手で元気な外向型の人は目立つが、そう多くはない。それは、社交的な人が多いと思われがちなマスコミの世界でも、同じだ。テレビ局でも新聞社でも出版社でもネット企業でも、文学部系の出身者や、文学や哲学を好むタイプが一定の割合を占める。彼らの多くは誰かに言われて何かをするというよりは、自分の頭でやるべきことを考えることを好む。一日中、誰とも話さなくても平気だったりするので、今日のコロナでの在宅勤務にはなじみやすいタイプと言える。
本書は「第三章」や「第四章」でさらに詳しく、対処法のノウハウを記している。「第五章」では「内向型人間と外向型人間は相性がいい」ということも書いてある。実はカミノさんの妻は、かなりはっきりした外向型人間なのだという。「旅行に行こう」と言い出すのは妻だが、細かいスケジュールを検討するのはカミノさん。高額家電を衝動買いしそうになるのは妻だが、ライバル商品とのスペックチェックや、本当に必要なのかを検討するのはカミノさん。バランスが取れているのだという。
「内向型人間」についての啓発書は少なくないが、本書は、カミノさんも書いているように、自身の体験を踏まえているので、いちだんとリアリティが伝わってくる。悩める読者と同じ目線の語り口――カミノさんと同世代の、ネット世代の内向的な読者は共感するところが多いのではないかと思った。
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