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廃線を歩けば、走っていた列車を思い出す

廃線探訪入門

 廃止になった鉄道の跡を歩くのがブームになっているようだ。本書『廃線探訪入門』(天夢人 発行、山と渓谷社 発売)は、廃線歩きの楽しみ方や実際の探訪記を収めた本だ。

 「廃線先生」とファンから呼ばれている鉄道ライターの松本典久さんが、その楽しみについて、こう挙げている。

 ・鉄道の歴史浪漫に触れられる 線路がなくても鉄道を思い、走ってくる列車の姿すら思い描くことができる
 ・遺構を発見すれば感動モノ トンネルや橋脚、駅施設などが残っている場合がある
 ・秘境の自然が待っている 完全に見捨てられてしまった廃線もある。道なき道を行くアドベンチャーとなる
 ・当時の様子を妄想しよう 「こんな鉄道に乗りたかったなあ」と思えれば、あなたの「廃線歩き」は成就である

マナー守って歩こう

 松本さんが廃線の歩き方のQ&Aを伝授している。いちばんの手掛かりになるのは現役時代の路線が記された当時の地形図だ。国土地理院に申請すれば旧版の地形図を入手できる(有償)。線路跡は築堤や切通しになっていたり、トンネルや橋梁、橋台などの遺構が残っていたりするので、探しながら探索するのが楽しみだ。初心者は『新・鉄道廃線跡を歩く』(今尾恵介編著、JTBパブリッシング)などガイドブックを参考にすればいい。私有地として規制されているところもあるので、マナーを守って歩こう。

 「第1章 廃線歩きに出かけよう」では、北海道・士幌線のタウシュベツ川橋梁や石川県の尾小屋鉄道跡、「好きな東日本の廃線第1位」になった信越本線の碓氷峠の区間の探訪ルポが収められている。

 また、廃線本のヒット作を何冊も出してきた地図研究家の今尾恵介さんが広島県の可部線の廃線区間を歩いたルポも。可部線は非電化区間であった可部から先(全線の4分の3)が2003年に廃止された。ところが一部区間の復活を望む住民の思いが行政とJRを動かし、可部~あき亀山間(旧・河戸駅の西側)を、2017年に列車がふたたび走るようになった。廃線の「復活」は、JR線としては全国で初めてだった。廃止区間では、駅舎が形を変えて活用され、地域住民の愛着が感じられるようだ。

 今尾さんは、廃線を地図で読み解く方法も書いている。最近は旧版の地形図がなくても鉄道が現役時代の空中写真を国土地理院のサイトで閲覧できるそうだ。多くの鉄道路線がどこかの時代に写っており、その中から解像度が高く縮尺の大きいものを現在の地形図と比較すれば線路を特定しやすいという。

東京都心でも廃線めぐり

 「第2章 都市にもある廃線めぐり」では、東京の都心や横浜にもある廃線跡を紹介している。上野公園脇の都電専用軌道跡、京成電鉄の博物館動物園駅跡、東京都港湾局専用線晴海線の晴海橋梁や横浜臨港線跡の「汽車道」などだ。

 「関西編」では、京都から大津へ、逢坂関を越える旧東海道本線と京阪電気鉄道京津線の廃線跡とトレッキングコースとしても人気の福知山線旧線跡の両方をめぐる日帰り旅を取り上げている。

 また、「名古屋近郊編」では、美濃・三河の名鉄跡を訪ねている。岐阜の谷汲線の終点・旧谷汲駅舎は資料館として再利用されている。かつて谷汲山華厳寺に参拝したことがある評者は懐かしく感じた。単線規格の狭い築堤の上を路面電車が走っていたのを思い出した。

 廃止後に整備された廃線跡を訪ねる「歩ける廃線跡20」では、北海道・小樽の手宮線、福島県の日中線、白棚線、千葉県の九十九里鉄道、兵庫県の三木鉄道、島根県の大社線などを紹介している。

 廃止路線の中には第二の人生を送っているところもある。その中からレールマウンテンバイクが走る岐阜県の神岡鉄道、レールパークとして整備された秋田県の小坂鉄道などを取り上げている。小坂鉄道レールパークでは、ディーゼル機関車の運転体験や動態保存されているブルートレインへの宿泊が可能だ。

 BOOKウォッチでは、『消えた!東京の鉄道310路線』(イカロス出版)などを紹介済みだ。

  
  • 書名 廃線探訪入門
  • 監修・編集・著者名「旅と鉄道」編集部 編
  • 出版社名天夢人 発行、山と渓谷社 発売
  • 出版年月日2019年7月26日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・158ページ
  • ISBN9784635821667

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