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日本のコンビニ1号店は北海道だった!

コンビニチェーン進化史

 人手不足や人件費の高騰により、コンビニの24時間営業が問題になっている。一部のチェーンでは、深夜帯の無人店舗化の実験を始めた。消費者のニーズを開拓し、どんどん利便性を追求してきたコンビニだが、いま一つの「踊り場」に差し掛かっているのでは、という声もある。本書『コンビニチェーン進化史』(イースト新書)は、日本のコンビニの誕生から今日までを追った本である。これを読めば、コンビニのすべてが分かる内容だ。

「群雄割拠」の時代も

 著者の梅澤聡さんは、流通ジャーナリスト。西武百貨店を経て、1989年に商業界に入社。「月刊コンビニ」編集長、「飲食店経営」編集長を経て独立。現在も両誌の編集委員を務める。

 日本におけるコンビニ1号店はどのチェーンかと聞くと、多くの人はセブン-イレブンと答えるだろう。実際、本書の「第1章『コンビニエンス・ストア』の夜明け」もセブン-イレブンの実質的な創業者である鈴木敏文氏がアメリカのサウスランド社と提携し、1974年、東京・豊洲に第1号店をオープンしたことから書いている。

 しかし、現存するチェーンでいえば、北海道のセイコーマートはぎなか店が1971年8月のオープンで、現在も営業する最も歴史のあるコンビニ店舗である、と紹介している。

 このように、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの三大チェーンに限らず、全国各地の中小のチェーンを含め総覧しているのが、本書の特徴だ。

 「第2章 新興勢力参入による『コンビニ群雄割拠』」が詳しく触れている。ファストフードとコンビニを合体させた「コンボストア」業態で攻めたミニストップ、中京圏を中心にユニーの総合力を背景に拡大したサークルK、長崎屋が生鮮品とカウンターフーズに注力したサンクス、山崎製パンが販売店を守るために出店したデイリーヤマザキ。

 地方に基盤を置くローカルチェーンも拡大した。北海道で大手に負けない勢力を誇るセイコーマート、独自の弁当を販売する広島発祥のポプラ、他社が手を出さない北関東を固めたセーブオン、地元密着で神奈川に地盤を築いたスリーエフ。

 ほかにも小売店の共同運営から始まったマイショップ、ミニ・スーパーの連合体としてのKマート、酒屋を守るために連携したココストアなどがある。

 この後、相次ぐ統合によって三大チェーンによる三つ巴の争いになる。ファミリーマートとサークルKサンクスの経営統合により、ファミリーマートがセブン-イレブンを猛追、ローソンもセーブオンなどローカルチェーンを飲み込み、拡大する。

 こうしたコンビニの系譜を紹介するほか、第3章では巨大な流通システム、第4章では主力商品である「コンビニ食」、第5章ではサービス産業を取り込むインフラについて解説している。

コンビニの食を支える協同組合

 コンビニの弁当惣菜の開発を支えているのが、それぞれのチェーンごとに組織した「協同組合」だ。セブン-イレブンのファストフード(米飯、調理麺、サンドイッチなど)と日配品(パン、デザートなど)の二つの部門の売上は全体の40数%を占めていて、ほとんどがセブン-イレブンの独自商品であり、1979年に結成した日本デリカフーズ協同組合が商品を供給している。

 主な参加メーカーは、味の素、東洋水産、エスビー食品、ハウス食品、森永乳業、カルビー、プリマハム、伊藤ハム、日本ハムなどであり、運営する国内専用工場は165拠点にのぼるという。

 おにぎりや焼き立てパン、中華まん、おでん、人気ラーメン店とコラボしたカップ麺、コンビニコーヒーなどヒット商品の開発秘話も紹介している。

コンビニは飽和か?

 2000年代後半に「コンビニ飽和論」が論議されたことがあったが、東日本大震災によりコンビニの必要性が見直され、その後も増え続けている。日本全国では、2019年11月末で5万8659店舗ある。しかし、トップのセブン-イレブンは、19年度は過去最少の100店舗(別会社が運営する沖縄出店分がほかに50店舗)増にとどまった。営業利益率の低下が指摘されている。

 問題になっている「24時間営業」について、著者は時短営業を一概に否定する立場にない、としながら、深夜帯の休業が昼間の売上減を招くことも指摘している。チェーン全体のイメージをどう変えてしまうか、検証に時間がかかる、としている。

 余談だが、弊社は東京・四谷にあるセブン-イレブン本社に近接している。四六時中、同社の社員や取引業者が本社ビルに出入りしているのを毎日見ている。その人の流れの多さにコンビニが扱う商品やサービスが広範であることを想像せざるを得ない。

 コンビニなしでは生活が成り立たないという人は多いだろう。コンビニが今の姿にどうやって進化してきたかが本書を読むとよく分かる。

 ちなみに鈴木敏文氏は、まだセブン-イレブンが800軒しかなかった1979年に、全国の食品小売業75万軒の1割、7万軒までコンビニが増える可能性がある、と予見したそうだ。著者は今は第二の創業期と位置づけ、さらなる進化を、と鼓舞している。

 BOOKウォッチでは、コンビニなどで働く外国人の問題を取り上げた『コンビニ外国人』(新潮新書)を紹介済みだ。

  
  • 書名 コンビニチェーン進化史
  • 監修・編集・著者名梅澤聡 著
  • 出版社名イースト・プレス
  • 出版年月日2020年2月15日
  • 定価本体860円+税
  • 判型・ページ数新書判・293ページ
  • ISBN9784781651200
 

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