かつては物流といえば「物をトラックで運ぶこと」と思われていたものだが(今でもそうかもしれない)、IT(情報技術)やICT(情報通信技術)、それらの進歩により生まれた「モノのインターネット」と呼ばれるIoTを使った管理が、ビジネスばかりかわたしたちの生活をも支えているという。
現代に生まれ変わった「物流」は多機能化する一方、発展途上なだけに脆弱さも残る。日本列島は近年立て続けに天災に見舞われているが、そのたびに「物流」がダメージを受け、市民生活にも大きな影響を及ぼしているのは、その表れといえる。
『アマゾン、ニトリ、ZARA...すごい物流戦略』(PHP研究所)は、物流についてこう述べて、かつてのように簡単なものではないことを説き起こす。
「世の中は、物流があるから成り立っている。物流がなければ、毎日の食事もできない。物流と言うと『物をトラックで運ぶこと』と思う人も多いが、物流がなければ、トイレも水道も電気も使えない。『電気?』と思うかもしれないが、電気も物流管理ができていないとスムーズに各家庭にまで来ない。消費を予測し、その分を生産し、電線を通じて供給する。量の差や、ばらつきがあると、スムーズに供給できない」
製品やサービスが、製造の段階から消費者や利用者の手元に届くまでが現代の物流であり、より確実にそのプロセスを意味するために、場合に応じて「ロジスティクス」という言葉が使われている。
9月6日に起きた「北海道胆振東部地震」では、北海道全域が停電する「ブラックアウト」が発生した。需要の大半をカバーしていた火力発電所が大きな揺れで緊急停止、需給が極端に不均衡となりバランスをみる指標の周波数が乱れ、それにより異常が伝わった他の発電所は故障を避ける仕組みにより次々と遮断し、電力供給がすべて止まってしまった。
7月の西日本豪雨の際も、同地震直前に列島を縦断した台風21号のときも、また同地震の際にも、被災地のコンビニエンスストアで食料品や飲料製品が底をついたことが報じられたが、こちらは従来の物流をめぐる、いわば二次災害。ブラックアウトは現代の物流をめぐる、機能不全といえるだろう。
本書は、タイトルにあるように、アマゾンや、家具・生活雑貨のニトリ、ファストファッションのZARA(ザラ)など、消費者の手元に製品を届けるまでを「物流」ととらえて通販ビジネスの先端を走る企業の戦略を解説。通販の拡大は目覚ましく、これらの各企業ばかりではなく、小売り各社はこぞってインターネットを使ったECに力を入れている。
通販をめぐっては、拡大の一方、配送を請け負う宅配会社でドライバー不足が生じるなどして輸送コストが上昇、昨今は、その先行きを懸念する声も上がっている。しかし、それは、物流が従来のままであればのことであって、現代の物流では恐れるには足らないことらしい。
ドライバーの負担となっている再配達防止のための宅配ロッカーの配置増や、コンビニなどでの受け取りなどのほか、これまでの「注文→自宅で受け取り」という、シンプルなパターンからの多様化が視野にある。「知る」「調べる」「買う(注文)」という買い物行動が、パソコン、スマートフォン、タブレット端末、電話、テレビのほかリアル店舗とどこでも同じようにできるようになり、受け取りは、自宅でも職場でも、店舗でも、あるいはコンビニや駅施設など客にとって便利な場所で可能――。ごく近い将来に一般化しそうなショッピングスタイルであり「オムニチャンネル」と呼ばれる。
米アマゾンは昨年6月、同国の自然・有機食品小売り大手、ホールフーズ・マーケットを買収したほか、各業界の大手小売り店と提携を深めている。通販でオムニチャンネルが主流化するのを見越したリアル店舗戦略とみる専門家が少なくないという。
著者の角井亮一さんは経営コンサルタント。物流の専門家で、自らも通販物流の代行会社を経営、多数の関連書籍を出版している。
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