読むべき本、見逃していない?

回転寿司は15分後に捨てられている!

  • 書名 大量廃棄社会
  • サブタイトルアパレルとコンビニの不都合な真実
  • 監修・編集・著者名仲村和代、藤田さつき 著
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2019年4月16日
  • 定価本体880円+税
  • 判型・ページ数新書判・318ページ
  • ISBN9784334044053

 本書『大量廃棄社会』(光文社新書)は今年(2019年)4月の刊。図書館では今も順番待ちになっている。いわゆるロングセラーだ。「アパレルとコンビニの不都合な真実」という副題からも分かるように、きわめて身近な問題を扱っている。朝日新聞の女性記者、仲村和代さんと藤田さつきさんの共著だ。

「保育園落ちた日本死ね!!!」が反響

 本書の大きな特徴は、冒頭の仲村さんによる長い「まえがき」。なぜこのテーマに関わることになったのか、詳しく書かれている。

 一般に新聞記者は、記者クラブに属している。当局の発表ネタを扱ったり、政治家や官僚、あるいは捜査関係者などに食い込んだりしながら記事を書く。程度の差はあれ、恒常的な取材相手と人間関係を築き、ふところに入ることが要求される。

 仲村さんも地方支局でそういう取材を経験してきた。しかし、人見知りするタイプということもあり、取材先から特ダネを入手するということが得手でなかった。というわけで東京の社会部に来てからも、記者クラブには配属されず、いわゆる「遊軍」、何でも屋の記者となる。そこで自分のセンスで、あれこれネタを見つけて掘り起こして書くと、他メディアも巻き込み全国的な反響があることを痛感する。

 例えば「保育園落ちた日本死ね!!!」。匿名のブログが話題になっていることに気づき、ネットに溢れる声を取り上げた。原稿を見たデスクの最初の反応は「これの何がニュースなの?」だったという。ところが国会でも取り上げられるなど反響が広がり、政府も対策に乗り出す。デスクからは逆に「もっと何か書けることはないか」と続報を催促された。

 つまり、本書は、分かりやすく言えば「保育園落ちた」報道の記者が、今度は「大量廃棄」という問題に取り組んだものだ。ようするに、普通の生活者、消費者として何となく疑問に思ったことを改めて記者として迫り、解明している。

国谷裕子さんと共同プロジェクト

 仲村さんは、やはり「はじめに」で、2013年にバングラデシュで起きた8階建てビルの崩壊事故のショックを回想している。ビルには5つの縫製工場が入っていた。がれきの山の中から、縫製工の少女ら1000人以上の遺体が見つかった。原因は地震や爆発ではない。勝手に建て増しなどをしていた違法建築によると見られている。崩壊前から壁にひびが入り、地元警察が事故前日には退去を要請していた。

 実は仲村さんはその半年ほど前、別の取材でバングラデシュを訪れていた。低賃金で働く人が多いバングラデシュは今や「世界のアパレル工場」。多種多様なブランドの服が作られている。ユニクロやGAPの服を私たちが割安感を持って着られるのは、バングラデシュの縫製工たちの低賃金によるところが大きい。そのことを知っていただけに、劣悪な環境で働かされていた人々が、無残な事故の犠牲になったことに、無関心ではいられなかった。

 今回の取材自体は2017年1月からスタートした。その前年の9月、NHKのクローズアップ現代のキャスターを退いていた国谷裕子さんと、朝日新聞が共同のプロジェクトを立ち上げた。国谷さんから提案があったテーマが「SDGs」(持続可能な開発目標)だった。現場のルポと国谷さんのインタビューで構成する。仲村さんらはルポを担当することになった。環境や貧困の問題をなるべく日本の消費者の関心に近づけることに心を砕いた。

「もうパンを捨てないと決めた、パン屋の物語」

 本書は「第1章 それでも洋服は捨てられ続ける」「第2章 アパレル"生産現場"残酷物語」「第3章 リサイクルすれば、それでいい?」「第4章 『透明性』と『テクノロジー』で世界を変える」「第5章 誰もが毎日お茶碗1杯のご飯を捨てている」「第6章 フードロスのない世界を作る」「第7章 大量廃棄社会の、その先へ」に分かれている。主として「アパレル」と「コンビニ」が取り上げられている。

 一連のキャンペーン記事の中には、朝日新聞の一面トップにもなったものもある。読者の中には記憶している人もいることだろう。二人の記者が「捨てられる新品の服 年10億点」という記事を書いた半月後には、英国メディアが、イギリスの高級ブランド「バーバリー」が売れ残った新品の服や香水などを大量に焼却しているというニュースを報じた。「世界各地で問題意識が高まっていることを感じた」と藤田さんは書いている。

 作って15分後には捨てられる回転寿司、閉店後に店員たちが黙々と売れ残り食品を業務用のゴミ袋に投げ込むデパ地下、毎年のように大量に余る「恵方巻き」は豚のえさに変貌する・・・。本書では様々な大量廃棄の現場が報告されている。同時に、そうした廃棄をなるべく少なくするための努力を続ける人たちも登場する。「もうパンを捨てないと決めた、パン屋の物語」などは、多くのパン屋にとって参考になる。

 「SDGs」は21世紀になって世界各国で共通語になってきた地球的な課題だ。『2100年の世界地図』(岩波新書)によれば、2100年の世界の人口は約111.8億人に膨れ上がる見通し。中でもアフリカは5倍になり、アジアではインド・バングラデシュ・パキスタンの3国が合わせて20億人を突破する。いわゆる先進諸国は微減だ。そうした途上国の人口増に伴って起きる環境激変を考える時、「大量廃棄社会」はどうなっていくのか。本書は、「今の暮らしぶりをいつまで続けられるのか」「このままでいいのか」と消費者に問いかける。

 

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