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「折れ耳」の人気猫は遺伝性の病気だった!

「奴隷」になった犬、そして猫

 インスタグラムの広がりもあって、ペットは大人気。かわいい被写体の代表格になっている。本書『「奴隷」になった犬、そして猫』(朝日新聞出版)は大手マスコミきってのペット業界通として知られる朝日新聞記者太田匡彦さんが、新聞やアエラなどで書いた記事をもとに単行本としてまとめたものだ。「『カワイイ』と『いいね!』の残酷な裏側」という帯が付いている。つまりペットブームの陰の部分に迫った報告だ。

30代はペットショップで猫を飼う

 日本では長年、犬が人気だった。ところが、ペットフード協会の調べでは、2017年から猫の飼育数が犬を上回り、18年もその傾向が続いている。犬は約890万匹、猫は964万匹だという。2000年代の初めごろ、猫は700万匹ぐらいだったというから相当の伸びだ。

 本書も猫の話から始まっている。「第1章」は「猫ブームの裏側、猫『増産』が生む悲劇」という見出し。豊富な取材で人気の内情をえぐる。

 まずペット猫の入手経路。ペットフード協会の18年分の調べによると、20~70代の平均では、「野良猫を拾った」(38.0%)、「知人/友人からもらった」(26.8%)、「ペットショップで購入」(14.8%)の順。これが30代では「ペットショップ」が25.0%に増える。実際、大手のショップでは前年比2割増のペースで販売頭数が伸びているという。猫ブームの主なる舞台はペットショップだという推測が付く。

 実は猫は「増産」が容易な動物なのだという。一日12時間以上の照明を与えると発情が促進され、年3回のペースで出産させることが可能になる。当然ながら人気種は引っ張りだこ。産めよ増やせよということになり、いろいろと問題が起きてくる。

動物愛護法に抵触

 本書に、筒井敏彦・日本獣医生命科学大学名誉教授の見解が引用されている。それによると、犬と猫は全く別物なのだという。犬では感染症を防ぐ有効なワクチネーションプログラムが確立しているが、猫ではワクチンで十分に抑えられずに広がってしまう疾患がある。求められる飼育環境も全く異なるという。実際、本書では、犬のブリーダーが猫にも手を広げたところ、感染症が蔓延、怖くなってやめたという話も紹介されている。

 猫の中で最も人気があるスコティッシュフォールドの問題点についても記されている。独特の「折れ耳」で知られる。実はこの折れ耳は、軟骨形成不全症のひとつ。優性遺伝する遺伝性疾患だという。症状には程度差があるが、発症すると四肢や体に生涯ずっと痛みがあるらしい。本書では、大和修・鹿児島大学教授が「そのような猫種は作らない選択をすべきだ」と指摘している。遺伝性疾患が出ることが分かっていて繁殖させる行為は、動物愛護法に抵触する可能性が高いと本書は書いている。

 ところが消費者は何も知らないまま、「人気の折れ耳」に飛びつく。業者は繁殖させる。メディアも人気をあおり、行政も手ぬるい。

犬もかつてはブームだった

 本書は続いて、「第2章 『家族』はどこから来たのか、巨大化するペットビジネス」「第3章『骨抜き』の12年改正、あいまい規制が犬猫たちの『地獄』を生む」「第4章 環境省は『抵抗勢力』なのか、19年改正を巡る『攻防』始まる」「第5章 8週齢規制ついに実現、犠牲になった『天然記念物』」「終章 『家族』になった犬、そして猫」と、ペットをめぐる様々な動きを掘り下げていく。

 太田さんは1976年生まれ。東大卒。経済部、アエラなどを経て現在は特別報道部。すでに2013年に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日文庫)を出版している。

 犬も一時はシベリアンハスキーやチワワなどに人気が集まり、ブームに沸いたが、今は沈静化し、ペット数も減っている。その背後には、繁殖に使われたたくさんの親犬たちの犠牲も存在する。太田さんは、30年から40年かけて作り上げられた犬のビジネスモデルが猫には短期間で押し寄せていると見る。そして猫も、犬と同じような道をたどることを危惧する。今やブリーダーが大量の繁殖用の猫を抱えており、ブームに陰りが見えた時どうなるのか、心配する業者も出始めている。

 本書では「本当に猫が好きな人ほど、今の猫ブームについて疑問を持ち始めている」という宮田玲子・「猫びより」編集長のコメントも紹介している。

  • 書名 「奴隷」になった犬、そして猫
  • 監修・編集・著者名太田匡彦 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2019年11月30日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・448ページ
  • ISBN9784022516565

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