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生命の尊さ伝える保護犬の物語

わたしは保護犬モモ

 平成29年度の犬・猫の殺処分数は、環境省の統計によると約4万3千頭。近年大幅に減少しているというが、それでも予想以上の数字だった。ペットブームの認識はあったが、その裏で、万単位の生命が処分されていたのか。

「犬の里親会」で出会ったモモ

 本書『わたしは保護犬モモ―モモの歩んだ365日』(合同フォレスト発行、合同出版発売)は、多摩美術大学教授の佐原龍誌さんが自身の体験をもとに書いた、家族と愛犬モモ(推定年齢4歳)の物語。

 飼い犬が老衰で息を引き取った2年後、佐原さん家族は再び犬が恋しくなり、犬探しを始めた。動物愛護協会から誘われた「犬の里親会」に参加し、モモと出会った。佐原さんは、モモと出会えた喜び、溢れんばかりの愛情、飼う者の責任を綴っている。

「我が家のもう一人の娘『モモ』。私たち夫婦は、この娘の一生を見届けるまでは死ぬことはできない。それが責任」

「犬としての尊厳と、あどけない優しさを伝えていけることを祈りつつ......」

保護されて1年、考えられない変化

 本書は「季節を忘れた街にいて」「春の風に乗って」「夏の香り漂う中で」「秋の装い」「冬、そしてふたたびの春」の5章から成り、すべて「モモ」の目線で語られる。

 「とても薄暗くて、湿っぽい縁の下」で生まれたモモ。モモが縁の下にいた時の飼い主は、40代半ばの男性。足が不自由で、一人暮らしの寂しさから犬を飼い始めたが、気付けば30頭以上になっていた。毎日の犬の食事にも事欠くようになり、最後には飼育放棄を余儀なくされた。

 モモは動物愛護協会に保護され、空腹と恐怖の日々は終わりを迎えた。病院で検査を受けると、栄養失調、発育不全、腎臓機能障害、心臓にはフィラリアという寄生虫が取り付いていることが判明。医者にも「長く生きられるかどうか」と気の毒がられたが、モモの気持ちは前向きだった。

「だれもわたしをどなりつけない、食べ物も水も、やさしくなでてくれる手もある。それだけで十分幸せ。臆病で弱虫で、おまけに体も弱いけれど、......わたしはうれしいの。人のやさしさ、温かさにふれることができた」

 有木家(物語上の名字)に引き取られ、通院、散歩、ドッグラン、旅行などをとおしてモモはすっかり家族の一員となり、幸せな日々を送る。

「1年前のわたしは、縁の下にいた。考えられない変化だった。......決して、生きることをあきらめちゃあだめなんだってこと。はっきり言える」

モモの願い、夢とは

 最後の「モモからのメッセージ」「あとがきにかえて」に、佐原さんの強い意志が表れている。

「人間社会にも、虐待や見捨てられる子どもたちがいる。......『殺処分だけは止めて!』『飢餓に苦しむ子どもたちを救ってあげて』。それは、人としての良識。......これがわたしの願い、モモの夢」

「殺処分は、罪のない動物たちを人間の身勝手から『死刑』にしているのと同じ行為......。それは、人間社会にある『いじめや虐待』によって、生命を奪われてしまう子どもたちの立場とどこか通じているのではないか......。もう、やめにしませんか! もう、たくさんです」

 本書は、大きめの文字サイズ、すべての漢字に付いたふりがな、さらにパラパラマンガ、絵かき歌まで収録。小学校低学年からでも読める配慮、工夫がなされている。生命の尊さを伝える格好の教科書であり、図書館に置く、授業で扱うなどして、ぜひ子どもたちに読んでほしい。

 著者の佐原龍誌さんは、1950年福島県生まれ。東京学芸大学大学院修士課程修了。現在、多摩美術大学教授(スポーツ文化論)。

 カバー・挿絵を担当した角田真弓さんは、1967年福島県生まれ。多摩美術大学絵画学科油画卒業。現在、教諭を務める小学校で本書をもとに読み聞かせを続けている。

  • 書名 わたしは保護犬モモ
  • サブタイトルモモの歩んだ365日
  • 監修・編集・著者名佐原 龍誌 著 / 角田 真弓 絵
  • 出版社名発行 合同フォレスト株式会社 /  発売 合同出版株式会社
  • 出版年月日2019年5月10日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数A5判・160ページ
  • ISBN9784772661355
 

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