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妹を殺された私が犯罪加害者を雇う訳

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お前の親になったる

 犯罪者の更生の役に立つことが、果たして自分にできるのだろうか? 著者は何度も自問した。それはアメリカで暮らしていた最愛の妹が夫に殺されるという、つらい体験をしていたからだ。本書『お前の親になったる』(小学館集英社プロダクション)は、犯罪の被害者に立った人の眼から、加害者を見つめ、支えるという稀有な体験をした人のドキュメントである。

なんで俺が犯罪者の面倒見なあかんねん!

 著者の草刈健太郎さんは、だんじりで有名な大阪・岸和田の生まれ。少しやんちゃだったが、大学を出て大手ゼネコンに就職。その後、家業の塗装会社に入り、順調に業績を伸ばしていた。

 そんな折、「職親プロジェクト」の立ち上げへの協力を打診された。刑務所などから出所した元受刑者を雇い入れ、社会復帰の手助けをするという就労支援プロジェクト。

 

「なんで俺が犯罪者の面倒見なあかんねん!」

 それが草刈さんの本音だった。

 草刈さんは犯罪加害者を憎んでいた。

「人を殺しておいて、無罪を主張するやつがいる」
 妹を殺した米人の義弟の裁判を通じて、草刈さんが思ったことだ。

彼らの「親」になる

 そんな葛藤を抱えながら、「職親プロジェクト」に協力する。本書には、雇い入れた元受刑者との「闘い」が、さまざま書かれている。嘘をつく。移り気。ギャンブル依存症。心がない......。そんな彼らとの日々がつづられている。

 このプロジェクトは、関西に拠点を置く飲食店や建設会社、美容室などが日本財団と協定を結んで始まった。家族や親族からも見放された元受刑者に住む場所と仕事を与える。「親」になって彼らを支える覚悟が求められる。実際に更生できるのは、ほんの一握りだという。それでもなぜ、彼らの「親」となり、尽くすのか。

 草刈さんの奮闘の記録はテレビ大阪制作のドキュメンタリー番組になり、テレビ東京系で放送されたばかりだ。

 犯罪の被害者と加害者について、決してきれいごとではないことが書かれている。なぜ、草刈さんが犯罪加害者に全力で愛情を注ぐのか。感動のドキュメントを一人でも多くの人に読んでもらいたい。

  • 書名 お前の親になったる
  • サブタイトル被害者と加害者のドキュメント
  • 監修・編集・著者名草刈健太郎 著
  • 出版社名小学館集英社プロダクション
  • 出版年月日2019年10月10日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・200ページ
  • ISBN9784796877787
  • 備考提供:小学館集英社プロダクション

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