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こんな女性編集者たちに囲まれてみたい!

ようこそ!アマゾネス☆ポケット編集部へ

 マンガの魅力はなんといっても絵にある。本書『ようこそ!アマゾネス☆ポケット編集部へ』(講談社)は、文芸誌を舞台にしたマンガだが、豪胆な筆致を一目見て衝撃を受けた。

頼もしい女性編集者たちがつくる文芸誌

 豪談社が誇る文芸誌「アウト・ポケット」は、頼もしい女性編集者たちの手によってつくられている。編集部を率いるのは、身体も心もとりわけ屈強な編集長・才堂厚子。彼女への畏敬と恐れから、ひとは「アマゾネス・ポケット」と呼ぶのだった。

 そこへ配属になった新人編集者・白柳紀乃子の成長物語という筋だが、アマゾネス軍団のインパクトが強烈だ。紀乃子が4等身くらいに描かれるのに対して、才堂らは10等身。筋肉が盛り上がり、超マッチョなのだ。

 内容は、編集者を主人公にした「お仕事小説」ならぬ「お仕事マンガ」なのだが、絵の迫力に劣らず、物語も熱い。

 12話が収められている。第1話「美女(アマゾネス)と野獣(ショウセツカ)」、第2話「冷静(コウエツ)と情熱の間」など、各話のタイトルにも工夫が。ちなみに( )内はルビ。

授賞パーティーは狩り場

 たとえば、第1話はこんな調子だ。とある文学賞の授賞パーティーに臨んだアマゾネスたちと白柳。その目的はただ一つ、受賞者に自分の雑誌で書いてもらう約束をとりつけることだ。

 分厚いステーキを頬張りながら、才堂はこうのたまう。

 「文学賞のパーティーってのは、"感性の野獣(ショウセツカ)"を捕まえるための狩り場よォ!!」

 受賞者に各誌の編集者が群がる。「デビュー作から全部読んでます」「同人誌時代の作品も全部読んでますよ」「先生の小・中・高の卒業文集を全て入手、読破させていただきました」などの口説き文句が飛び交う中、才堂は思いもよらぬ一言で作家の心をゲットする。

 「真の編集者は人生の全ての局面で『良い文章(エモノ)』への網(アンテナ)を張っている!!」

 それが才堂の背中から白柳が学んだ極意だった。

 こうして、白柳は校閲者、作家、DTP担当者、書店員、同僚らと切り結びながら成長してゆく。絵力があるので、多少強引な筋でも読者は納得してしまう。

 著者のジェントルメン中村さんは、2003年、「別冊ヤングマガジン」にて「マスラオ桶狭間」でデビュー。18年「セレベスト織田信長」が「WEBマンガ総選挙2018」で4位入賞。著書に『パチスロ男爵』がある。

 本書の第1話~7話は講談社の「IN☆POCKET」に連載、9話~12話は講談社文庫公式サイトに連載したもの。この「文芸路線」はもう少し読んでみたい。本、とりわけ文芸書があまり売れない時代にあって、編集者への応援歌になるだろう。講談社文庫公式サイトでの連載は続いているようだ。

編集者と作家は「共犯」関係

 ところで、評者も文芸編集者とは、さまざまな仕事をしたことがある。その一人、芝田暁(あきら)さんはエンターテインメント系のカリスマ編集者で、その少し早い自伝『共犯者』(駒草出版)には、その後『血と骨』で知られる梁石日(ヤン・ソギル)さんに書いてもらうため、出社前に梁さんの自宅に原稿を取りに行き、帰りにも立ち寄り、続きの原稿をもらったエピソードが書かれていた。土日も休まず通い、2か月で320枚が脱稿。残念ながら、その作品は直木賞を逸したが、梁人脈から新たな人生を歩むことになった。

 熱意をもって仕事をし、作家との「共犯」関係を築くのが、編集者の基本かもしれない。

 BOOKウォッチでは、作家の藤野千夜さんがマンガ雑誌の編集者時代のことをつづった自伝的小説『編集ども集まれ!』(双葉社)、歴史に名を残した編集者の列伝ともいえる『時代を創った編集者101』(新書館)などを紹介している。  

  • 書名 ようこそ!アマゾネス☆ポケット編集部へ
  • 監修・編集・著者名ジェントルメン中村 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2019年9月10日
  • 定価本体960円+税
  • 判型・ページ数A5判・160ページ
  • ISBN9784065147009
 

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