シニア婚活と聞いて、眉をひそめる人もいるかもしれない。しかし、本書『ルポ シニア婚活』(幻冬舎新書)によると、65歳以上で結婚する人は2000年の7800人から2015年には1万4500人と倍増している(人口動態統計)。事実婚も含めると、さらに多いだろう。
本書では、シニア世代の婚活の実態、実際に結婚したカップルの生活、シニア婚活による親子の亀裂、さまざまなトラブルなど、シニア婚活にかかわる光と陰をあまねく紹介している。
導入部はシニア婚活パーティーから始まっている。横浜のある中高年専門の結婚相談所が開いた成婚者によるトークイベント。夫74歳、妻62歳のカップルは毎晩のLINEで距離を縮めたという話を披露した。
若い世代で増えているネット婚活の波はシニア世代にも及んでいる。本書では「楽天オーネット スーペリア」を取り上げている。男性50歳以上、女性45歳以上に限定したサービスだから必ずしもシニア向けではないが、会員の平均年齢は男性が61歳、女性が56歳、離婚歴ありの人が7割だ。
入会金が3万円で月会費が1万円。イベントやパーティー、お見合いなどは別途料金がかかる。女性の場合、結婚はしたくないという人の割合が多いというから驚く。「夫にお仕えする人生はもうイヤだ」というのが理由だ。一方、男性は何歳になっても、「面倒をみてくれる奥さんがほしい」というそうだ。
このほか、地方での結婚相談を行う民間福祉団体・太陽の会の活動を紹介、キャンピングカーで旅を楽しむ77歳男性と66歳女性のカップルなどが登場する。67歳で再婚したとたんの妻の早すぎる死、酒乱で最悪の夫と別れた女性の悲惨な結婚生活などがつづられる。男性の子どもたちの後押しもあり、近く入籍するという。さまざまな苦難を乗り越えて結ばれたシニアカップルに幸多かれと読者も納得するだろう。
第3章「長引く婚活の理由」、第4章「子どもがほしいシニア男性たち」には、さまざまな例が登場する。国際結婚したカップルのその後の相談も紹介している。男性からは「妻が何を言っているか分からない」という言葉の問題とお金の問題だ。女性からは「病院で自分の症状を伝えられない」という言葉の問題と「毎晩求められるので勘弁してほしい」といった内容が多いという。婚前契約書の重要性を訴えている。
シニア婚活ブームに影を落としたのが筧千佐子被告による「後妻業殺人事件」だ。親の暴走を避けるため、子どもは、親のプライドや感情を逆なでないよう細心の注意が必要だ、という弁護士のアドバイスを紹介している。
評者の知人にもシニア結婚した相手から、娘の大学進学費用などの名目で多額の金銭を求められ、あっという間に離婚した例がある。本書でも国際結婚に限らず、シニア婚に金銭などにかかわる婚前契約を勧めている。
実際にシニア婚活している男性に知ってもらいたいのは、本書に出てくる男性の5つの「嫌われポイント」だ。
1 自慢話をする 学歴やかつての肩書をひけらかす 2 前の配偶者の話題が多い 前妻の悪口を言う男性は間違いなく嫌われる 3 お金に細かい 4 先を急ぎすぎる 5 下ネタを言う
著者の篠藤ゆりさんは、ライター。著書に『旅する胃袋』(幻冬舎文庫)などがある。本書には結婚相談所などで紹介された成功例が登場するが、水面下には結婚に至らない人が多いことは容易に想像できる。
最終章に登場するピースボートで出会った72歳男性と80歳女性カップルの話が清々しい。意外にもピースボートには定年退職後の世代の乗客が多く、長期間船上で共に生活するため、単身のシニアには出会いの場になっているという。
「シニア婚活は究極の終活」という、ある経験者の言葉を著者は紹介している。そして、「もう歳だからこそ」、人は孤独を癒してくれる伴侶を求めているのかもしれない、と結んでいる。
BOOKウォッチでは「後妻業殺人事件」の筧千佐子被告に面会・取材した朝日新聞記者による『筧千佐子 60回の告白』(朝日新聞出版)を紹介している。
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