GAFAの一角を占め、物販でも世界的に大きな地位を築いている巨大企業、アマゾン。その日本法人の広報責任者だった小西みさをさんが、アマゾン流の広報のノウハウを披露したのが、本書『アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割』(宝島社)だ。
小西さんはソフトバンクやセガなどで10年以上の広報経験を経て、2003年にアマゾン ジャパンの広報責任者になった。まだ書籍だけを販売しているネット書店というイメージの会社だった。そこから、さまざまな手法でブランディングを始めた。
本書では、アマゾンが実際に伝えたストーリーの一部を紹介している。
アマゾンの認知度を拡大するため、当時話題だったハリー・ポッターの最新作を1箇所に集め、25メートルプール相当の面積に高々と積み上げ、「出荷準備完了!」とテレビ番組で紹介した。アマゾンのアクセス数・購入者がともに増加、認知度拡大につながった。
また、アマゾンのサービスの良さを実感してもらうため、社内で「シンデレラ」と呼ばれている女性に登場してもらった。彼女は日本人の平均サイズの足、ふくらはぎの大きさを持ち、靴の使用感や履き心地を調べていたので、そう呼ばれていた。「大人の社会見学」としてメディアを物流センターに招待し、シンデレラの存在や業務を紹介した。すると、アマゾンのサービスやアパレル商品の認知度が拡大したという。
「ストーリー」という言葉をアマゾンの社内では使っていないが、ストーリーで伝える重要性は、アマゾン社員にとって「大前提となっているもの」、「身についているもの」、「常に意識しているもの」という空気のような存在だという。創業者のジェフ・ベゾスのマイルールをベースにしたのが、以下の8つの特徴だ。
1 「ある場面」を具体的に語る 2 例え話を頻繁に使用する 3 伝えたいポイントを絞る 4 お客様に関係のない話はしない 5 不明瞭な数字を出さない 6 時間を感じさせる話をする 7 潔い 8 しつこいくらい何度も同じ話をする
社内にはストーリーを重視する仕組みがいくつかあるという。例えば、新しい事業アイデアを提案する際、パワーポイントを使わない、文書形式で書く、プレスリリース形式で作成するというルールがあるそうだ。これはアマゾンがストーリーで伝えることを重視しているからだ。
小西さんが在任中の2015年にはアマゾンがトヨタ、グーグルを抜き、初めて日本のトップブランドになった(日経BPコンサルティングのWEBブランド調査)。広報本部長を務め、17年に退職・独立し、現在はさまざまな企業をサポートしている。
広報と広告宣伝の違い、社員に徹底するコミュニケーションのルールなど、広報や宣伝に携わる人の参考になる内容が盛りだくさんだ。
「はじめに」に意外なことが書いてあった。「今なら、"アマゾン超え"は十分可能」という一節だ。アマゾン・ドット・コムが誕生したのは1994年、アマゾンが日本に上陸したのが2000年。当時と今とでは情報を浸透させる環境に格段の違いがある。現在のSNS環境を有効に生かせば、アマゾンよりもストーリーを伝えるのがうまい存在になることは決して難しくない、と書いている。
最終の第5章は「明日からのセルフPR術」。企業だけでなく、個人のセルフブランディングにも有用なことが書いている。あのジェフ・ベゾスでさえ、プレゼン本番まで何度も練習を重ねているという。「動画に撮る」「録音する」「人に見てもらい、改善点を指摘してもらう」というポイントは、明日からでも役に立ちそうだ。
アマゾン関連では『デス・バイ・アマゾン』(日本経済新聞出版社)、『アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』(PHP研究所)、『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社)、『出版の崩壊とアマゾン』(論創社)などを紹介済みだ。
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