「5年間ひきこもり、コミュ障男が、ナンパで人生を変えた」という帯の文句が気になり、手にしたのが本書『ナンパが最強のソリューションである』(宝島社)。ナンパというと、若い頃の失敗が頭によぎったり、駅前でナンパしている若者を見て腹が立ったりと、いい印象がない人も少なくないのでは。
著者の零時レイさんは、慶應義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科研究生を経て渡仏。3年を経て帰国後、5年間ひきこもる。人格崩壊の危機を感じていた2011年、33歳にして初めてナンパと出合い、以後ベテランすご腕ナンパ師20人から教えを受け、それを体系化したというふれこみだ。NLPナンパ研究所「スパルタ部」を主宰、著書『究極の男磨き道 ナンパ ~コミュ障ひきこもりがストリートに立った日~』(BBR)もある。
零時さんはナンパによってモテ力のほかに、以下のものを手に入れたという。
「圧倒的自信、行動力、交渉力、煮えたぎる情熱、叩かれるほどに燃えるレジリエンス、メンタル、感情のタフネス、包容力、影響力、超集中、独創的な思考、トーク力、軽々と自分を操れる自己マネジメント力......。」
本書は実際のエピソードを描きながら、ナンパの4つのパターンを紹介、それぞれ得られるスキルにふれている。それはこんな塩梅だ。
1 ふざけ系ナンパ 解放力、エンタメ力、逆境を楽しむ力 2 オラオラ系ナンパ キレ芸、主導権、直球アプローチ 3 ナルシスト系ナンパ 恋愛ごっこ、教育者、テイクアウェイ 4 誠実系ナンパ 太陽アプローチ、無の境地、魔法陣
ナンパのテクニックや実際のトークのやりとりも出てくるが、面白いのはナンパの師匠たちのキャラクターやエピソードだ。
たとえば「ふざけ系」の師匠は、難関大学卒、高身長のイケメンなのに、キモい空気を発し、イケてない人生を送っていた。ナンパを始めてから半年後、500人目で人生初の彼女をゲットする。別れてから以前ほど思いつめることがなくなった。「女子から笑いをとれば、重さが抜けていく」ことに気がついてからは好循環に。2人組の女子にこう声をかける。
「会いたくて~会いたくて~震える~」 「てか女子同士で腕組むの禁止だぞ? 間に男子をはさめばオッケーだけど!」 「君ら、本当は仲悪いっしょ。見せかけの友情だってバレてるぞ?」
この様子を見ていると初心者も勇気が出てくる。著者は「人生を呪縛しているものから、自分を解放した結果、他人も解放してやることができる」、つまり解放力を得ると解説する。
ナルシスト系ナンパでは、国立大卒元ホストで国家公務員の師匠も登場する。外見は普通だが、色気、オーラを発し、気の強そうなギャルに話しかけ、なんと電話番号をゲットする。「ベタな口説きをなんの恥ずかし気もなく演じ、女子の空想の中にある恋愛像を具現化する」と著者。
本書の解説には、心理学、行動経済学、NLP(神経言語プログラミング)などの用語が出てくる。このあたりはさすが慶應卒のインテリジェンス。ただのナンパ師とは違う。
著者はエピローグで「こっちが性欲に駆られるのではなく、女を性欲に駆らせるほどの振る舞いができるってことに、とんでもない自己啓発性がある」と書いている。
軽い体裁を取っているが、中身は濃い。コミュニケーションの強者になるためのヒントに満ちた本だ。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?