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「奇跡の中学生作家」が「生きる」をイキイキと描く

14歳、明日の時間割

 あさのあつこさん、西原理恵子さん、俵万智さんらが絶賛する「奇跡の中学生作家」・鈴木るりかさん――。出版界で話題になっていると知り、鈴木さんの小説第2弾となる本書『14歳、明日の時間割』(小学館)を手に取った。本書に掲載されているプロフィールは、現役中学生らしさがにじみ出るユニークなものとなっている。

 鈴木さんは、2003年東京都生まれ。史上初めて、小学4、5、6年生時に小学館主催『12歳の文学賞』大賞を受賞した。現在、都内の私立女子中学校3年在学中。学校では家庭科クラブに所属。趣味はギター、ゲーム、料理。一人っ子。好きな作家は志賀直哉、吉村昭。好きな科目は国語、嫌いな科目は数学。好きな有名人はさまぁ~ずの三村さん、テンダラー。2017年刊行のデビュー作『さよなら、田中さん』は10万部のベストセラーとなった。

時間割に見立てた7つの短編集

 本書は「一時間目 国語」「二時間目 家庭科」「三時間目 数学」「四時間目 道徳」「昼休み」「五・六時間目 体育」「放課後」と、学校の時間割に見立てた7つの短編が収録されている。ここでは、鈴木さんの私小説を思わせる「一時間目 国語」と「放課後」を紹介したい。

 「一時間目 国語」では、主人公の明日香は出版社が主催する小説賞の特別賞を史上最年少で受賞した。受賞から数ヵ月後のある放課後、明日香は担任の矢崎先生に呼び出される。矢崎先生は、明日香の受賞作が載った文芸誌を読んだと言い、明日香を褒め称えた。ところが、そこから思わぬ展開を見せる。

 「実は僕も十代の頃からずっと小説家志望で、創作活動を続けているんだ」と矢崎先生は打ち明ける。「僕は必ず作家になる」という確信はあるのに、新人賞に通過できない。その理由は、下読みをする駆け出しの作家、ライター、過去の受賞者がものすごい才能に出合った場合、嫉妬でわざと落として、編集者にまで回さないようにしているからだと考えている。

 「このままじゃ嫉妬に潰されて、僕はいつまでたっても世に出られない」と、矢崎先生は明日香の担当編集者に自分の原稿を渡してほしいとお願いしてきた。明日香が戸惑いつつ読んでみると、「良い、悪い、ではなく、どうしよう」という感想しか出てこない。明日香は担当編集者に原稿をしぶしぶ渡すが......

 「放課後」では、主人公が矢崎先生に代わる。小説家になることへの並々ならぬ熱意と、明日香への嫉妬、思い通りにいかない現実への絶望が描かれている。

 「本当は、○○になりたかったんだけど。このフレーズを口にするような大人にはなりたくないと思っていた。...じゃあ、あなたが今生きている現実はなんなんだ? 本当じゃないのか。自分で自分の今を否定してどうする?」

 矢崎先生のこの自問自答が、特に印象的だった。中学生の鈴木さんから、生き方を問われているような気がした。確かに、中学生だった頃の自分も、大人になった自分がそんな思いで生きていたらがっかりするだろう。鈴木さんの真っ直ぐな、鋭い言葉に気づかされる。

自分が確かに過ごした日々のかけら、匂い

 鈴木さんは、本書に込めた思いを次のように語っている。

 「子供のためだけに書いたのではありません。アフタースクール、卒業して何十年の大人のかたにも、かつての自分が確かに過ごした日々のかけら、匂いを、感じていただけたら嬉しいです。青春期、その一歩手前の季節の焦燥と孤独と不安と、一瞬のきらめきと憧憬。これからそんなシーズンを迎える人、今まさにその中にいる人、既にその時を過ごされた人たちの心に届きますように...」
(小学館『14歳、明日の時間割』特設サイトより)

 7つの物語にそれぞれちょっとした事件が用意されていて、主人公たちはどうやって乗り越えていくのか、ハラハラ、ワクワクしながら読者は見守ることになる。大人目線で読むと、最近の中学生はこんなことを考えているのかと新鮮に感じたり、自分が中学生の頃はこうだったなぁと懐かしんだりできる。10代半ばの多感な時期に経験した出来事や心境を、希望を感じさせる物語に変えて表現できることが素晴らしい。

BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 14歳、明日の時間割
  • 監修・編集・著者名鈴木 るりか 著
  • 出版社名株式会社小学館
  • 出版年月日2018年10月17日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・288ページ
  • ISBN9784093865241
 

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