暇つぶしに放送大学をよくみる。去年(2018年)は丸山茂徳先生の「地球史を読み解く」が面白かった。「プレートテクトニクス」を地球内部の構造にまで拡張した「プルームテクトニクス理論」の提唱者の一人で、最新理論を使って、超大陸の離合集散から古代の生物の大量絶滅などの原因や時期まで快刀乱麻で説明をつけてしてしまうのだから、すごい。ただ、この科目は大学院修士課程用なので、ボーっとみているだけではなかなか頭に残らない。
ところが、同じような内容を、もっと易しく書いた本を見つけた。『地球とは何か――人類の未来を切り開く地球科学』(SBクリエイティブ サイエンス・アイ新書)だ。著者の鎌田浩毅さんは火山学者の京大教授だが、科学コミュニケーションも専門に掲げているだけに、さすがにわかりやすい。
地球の生い立ちから、資源、環境問題まで、最新の情報を紹介しており、学校の先生などには格好の内容で、事典代わりにも使える。
われらが地球は48億年前に微惑星が集まってできた。当初はマグマオーシャンとよばれる高熱の火の玉だったが、40億年ほど前に表面が海に覆われ、同時に海底の岩板=プレートの運動が始まった。海洋プレートが陸のプレートの下に潜り込むと、その残骸がマントルの中に沈み込んでいく、それがコールドプルーム。その反作用によって地球の奥深くで熱せられた熱いマントルが地表に向かって上がってくる、これがホットプルームだ。
ホットプルームが海底に噴き出せば、巨大な海底火山を造る一方、大陸の中で噴き出せば、大陸を分裂させる。地球に超大陸が出現したり、複数の大陸に分かれたりすることも、プルームテクトニクスによって説明されている。
最初の超大陸であるヌーナ超大陸ができたのは19億年前で、その後も3つの超大陸が出現した。最後の超大陸・パンゲア大陸は2億5000年前にでき、現在はそれが7大陸に分かれているわけだが、数億年後にはまた超大陸ができると考えられている。この間に起きた生物の大量絶滅の規模や時期やその原因なども、今や、かなりの根拠をもって証明されているらしい。
本書によれば、私たちが住む日本列島をユーラシア大陸から引き離し、その間に日本海を作り出したのもホットプルームだという。
同じ時期に出版された『フォッサマグナ――日本列島を分断する巨大地溝の正体』(藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス)は、フォッサマグナの成因を探り、ホットプルーム説を使って詳しい成因を説明している。
フォッサマグナというのは日本列島を南北に走る地溝帯で、その西端は糸魚川―静岡(安倍川)構造線とされており、日本列島はこの構造線を境に東北日本は北米プレート、南西日本はユーラシアプレートに属している。しかし、不思議なことにフォッサマグナの東端は、はっきりしていない。藤岡さんの説は、概ね以下のようだ。
フィリピン海プレートを造ったスーパーホットプルームの一部が分かれ、1700万年前ごろからユーラシアプレートの東端に現れ、大陸の端を三方に切り裂き始めた。その裂け目の2本の溝が日本海となり、残りの1本の溝がフォッサマグナとなったとみる。 ざっと200万年で日本海ができあがり、日本列島はおおむね現在の位置に落ち着いた。 そのころ、太平洋側ではフィリピン海プレートが列島の下に潜り込み、その上に乗った丹沢山地が列島に衝突した。この南からの陸地の衝突のせいで、フォッサマグナは北部と南部で大きく構造が違ってしまったという。一方、同じころに日本海の海底も日本列島に潜り込み始めた。 この東西からの圧縮によって、フォッサマグナはどんどん浅くなり、ついに陸のくぼ地となり、溝の周囲に赤石山脈や北アルプスができた――のだとみている。
余談ながら、藤岡さんの尊父・藤岡謙二郎氏は著名な人文地理の教授だった。先生は授業の途中で喫煙休憩をとり、聴講生に声をかけ、出身地にまつわる話をする趣味があった。ある時、私に声がかかった。静岡市出身と知った教授は、大谷崩とフォッサマグナについて、しばし話された。大谷崩は私がよく登っていた山だった。この本を読んで往時を懐かしく思い出した。
「プレートテクトニクス」理論について、本欄では『日本列島の下では何が起きているのか』『太平洋 その深層で起こっていること』を紹介している。
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