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地味系男子×派手系女子のじれったい恋の行方は?

君に恋をするなんて、ありえないはずだった

 学生時代を振り返ってみると、ある程度似た雰囲気やファッションセンスを持つ者同士がまとまって、グループをつくったり恋人関係になったりすることが多かった気がする。自分との共通点を相手の中に見出して、親近感を抱くのだろうか。本書『きみに恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業』は、その逆パターン。「最底辺眼鏡男子×派手系美少女」という真逆の二人が繰り広げる恋愛物語だ。

 本書は、17年4月に宝島社より刊行された『君に恋をするなんて、ありえないはずだった』の続編で、同年7月に同社より刊行された。どちらも小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載されていた『眼鏡とあまのじゃく』に加筆修正し、改題したもの。著者の筏田かつらさんは、11年より「小説家になろう」に『静かの海』の投稿を始め、16年に同作で第4回ネット小説大賞を受賞した。

 物語の舞台は、千葉県南総にある県立高校。高校三年生の飯島靖貴(やすき)は、塩顔眼鏡、身長小さめ、郷土地理研究会所属。クラスメイトの北岡恵麻(えま)は、校内でトップクラスの美女。巻き髪、化粧、短いスカートでばっちり決めている。

 靖貴は恵麻を初めて見たときからかわいいと思っていたが、一年生の頃、恵麻に邪険にされた経験から苦手意識を持っていた。ところが、三年生の夏休み直前の勉強合宿で、ケガをした恵麻を靖貴が助けたことから二人の距離は縮まる。徐々に打ち解けてきたところで、靖貴は偶然、恵麻が靖貴の陰口を友人に言っているのを聞いてしまった......。恵麻の裏切りに傷つき、校内で変な噂まで広まり、靖貴は「遠くに行きたい」と思い立つ。自分のことを誰も知らない土地の大学を受験し、人生を一回リセットすると決める。

 地味、オタク、冴えない、最下層......靖貴はさんざんな言葉で形容されているが、彼の優しさ、真面目さ、一途なところに好感を持った。物語の終盤に靖貴は「......ま、しょーがねーけどな」と呟き、「人生にはどうしようもなくても受け容れなくてはいけないことがあって、きっとこれがその一つなんだろう」と悟る。不器用でじれったい二人の恋は、どんな形で卒業を迎えるのか?

 著者がこの物語を書き始めたのは「『普通の高校生が、受験勉強しながら恋愛に四苦八苦する話が読みたいな』と思っていたところ、なかなか望むような話が見つからなかった」からで、「どれだけ現実でもありそうな要素だけで物語を書けるか」もテーマにしているという。設定が現実離れしていないからこそ、靖貴の抱えるコンプレックスや奮闘ぶりがリアルに感じられる。ネット上に公開された小説が書籍化するケースは多々あるが、中でも本書はキャラクターの性格や感情の動きがしっかりと描写されていて、読み応えがある。

 『君に恋をするなんて、ありえないはずだった』は「このマンガがすごい!WEB」でコミカライズされ、コミックスも発売中。

BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 君に恋をするなんて、ありえないはずだった
  • サブタイトルそして、卒業
  • 監修・編集・著者名筏田 かつら 著
  • 出版社名株式会社宝島社
  • 出版年月日2017年7月20日
  • 定価本体640円+税
  • 判型・ページ数文庫判・313ページ
  • ISBN9784800274632
 

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