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忍者は手裏剣を使わなかった!

そろそろ本当の忍者の話をしよう

 このところ歴史的に何度目かの忍者ブームらしい。これまでのブームとやや違うのは、忍者というものを科学的かつ学術的に捉えようとする動きが加速していることだという。

 本書『そろそろ本当の忍者の話をしよう』(ギャンビット)は、歴史学者で忍者に詳しい山田雄司・三重大学教授の監修。忍者研究の最新事情などが紹介されている。史跡探訪や古文書紹介、忍者の末裔の直接取材などもあり、なかなか楽しい。

戦いで「神妙奇異の動き」

 忍者は「にんじゃ」と呼ばれていなかった、手裏剣を使っていなかった、水蜘蛛は両足に履いて水の上を歩くものではなかった・・・漫画やテレビ、映画などでおなじみの半ば常識化していた忍者に関する知識が近年、軒並み否定されているそうだ。忍者という存在にスーパーマンや謎のロマンを感じていた向きにとってはちょっと残念なことだろう。山田さんは、「逆に言えば、忍者だったらそういうことをしたかもしれないという想像をかきたてるほど、忍者は魅力的な存在であるともいえるだろう」と語る。

江戸の目明し』(平凡社)によれば、時代劇で活躍する目明しや岡っ引きなども、実態とはかけ離れているというから、このあたりはいわば「想定内」ということか。

 忍者は長く「伊賀者」と呼ばれた。文献での初出は1487年。伊賀、甲賀の忍者を称する人々が、戦いで「神妙奇異の動き」をしたという記録がある。中でも伊賀の河合安芸守一族が「忍において抜群の功あり」、「故に代々伊賀者を称せらる」、「これにより伊賀者の名の起こり也」と記されている。

弘前藩にも忍者

 最近の忍者ブームをけん引するのが、山田さんの三重大学だ。2012年から忍者に関する学術的な研究を開始、17年には国際忍者研究センターを設置した。歴史系の文系学部だけでなく、教育学部、生物資源学部、工学部、医学部まで参画しているという。そして「科学」の視点から、忍者と忍術の研究を進めている。「息長」という呼吸法を実際に行った時の脳波の状況や、兵糧丸、毒、薬草等の化学、さらには狼煙、火薬、身体といったさまざまな側面からアプローチしているそうだ。2018年2月には、忍者の聖地・伊賀において国際忍者学会の第一回大会が開かれ、国内外から200人以上が集まったという。

 忍者による町おこしも進んでいる。忍者による地域の活性化だ。文化観光振興などを目的に日本忍者協議会が結成され、国会議員有志による「忍者NINJA議員連盟」もできている。

 本書で初めて知ったのは、忍者は伊賀、甲賀の専売特許ではないということ。これまで「忍者未開の地」とされていた青森、福井、佐賀などでも忍者がいたことが明らかになった。

 たとえば弘前藩では「早道之者」とよばれた忍者集団が存在し、平成28年には忍者屋敷だった古民家が発見された。本書にはそうした貴重な記録や写真が多数掲載されている。本当の忍者はどんな存在だったのか、なぜ様々なフィクションが創作されたのか、忍者について詳しく知りたい人には格好の参考書となりそうだ。

  • 書名 そろそろ本当の忍者の話をしよう
  • サブタイトル最新版忍者ビジュアルガイドブック
  • 監修・編集・著者名佐藤 強志 著・写真、山田 雄司 監修
  • 出版社名ギャンビット
  • 出版年月日2018年8月25日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数A5判・224ページ
  • ISBN9784907462376
 

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