関東から関西に引っ越すと、「変な地名」が多いことに気づく。あるいは、北海道や沖縄に行っても、同じことを感じる人が多いだろう。
地域によって異なる歴史を持つ日本では、地名を通して地域の歴史を知ることができる。本書『古代‐近世「地名」来歴集』(アーツアンドクラフツ)は、そうした地名の由来を辞書的にまとめたものだ。
本書は高名な民俗学者、谷川健一さんの主導で川崎市の協力のもと1981年に創設された日本地名研究所の監修。学際的な研究、地名文化の高揚などを目的に、川崎市に研究所を置き、機関誌「地名と風土」、交流誌「日本地名研究所通信」を発行している。
全体は「都市の地名」「人物ゆかりの地名」「社会文化の地名」「宗教ゆかりの地名」「地形・生物・鉱物ゆかりの地名」にわかれ、それぞれ特徴的な地名を紹介している。
「都市」の章では「大和」「京都」「東京」「沖縄」が取り上げられている。「大和」では「明日香」「石上」「磐余」「宇陀」など古代までさかのぼる地名が少なくない。「京都」では平安にさかのぼるものが多い。
「人物ゆかりの地名」では「渡来・帰化人地名」が紹介されている。たとえば京都の綾部は「漢部」(あやべ)をルーツとし、4、5世紀に渡来した「漢人」(あやびと)、すなわち中国系の渡来人との関係が想定されている。平安時代の『和名抄』に出てくるそうだ。
関西に行って驚くのは「百済」という地名があることだが、これはもちろん朝鮮半島の百済に由来する。660年に新羅・高句麗の連合軍に滅ぼされたが、大量の難民が渡来してきたことはよく知られている。大阪では駅名や川の名にもなり、奈良県内には小字でも6か所もあるそうだ。
スポーツ選手の名前でおなじみの錦織や村主も渡来人由来だという。錦織は高級絹織物の能力を持つ工人集団で、百済からの渡来人。村主は仁徳朝などの渡来人で村長の意だという。地名としても使われた。
本書は地名についての専門家20人が分担執筆しており、巻末には索引も付いている。アイヌ語由来の地名などもまとめられている。自分の故郷の珍しい地名などを探り、地名を通して歴史をタイムスリップしてみることができる。
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