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「死者たちに如何にして詫ぶ赤とんぼ」

最終獄中通信

 日本には「獄中文学」、いや「死刑囚文学」ともいうべきジャンルがあるような気がする。小松川高校事件の李珍宇、連続射殺事件の永山則夫などの名がすぐに思い浮かぶ。

 李珍宇は獄中書簡『罪と死と愛と』で知られ、懸賞小説に応募していたこともあったという。永山則夫の『無知の涙』はあまりも有名だ。

日本一行詩大賞の俳句部門を受賞

 本書『最終獄中通信』(河出書房新社)の著者、大道寺将司元死刑囚(1948~2017)もその中に入りそうだ。三菱重工爆破事件など一連の連続企業爆破事件のリーダーとして死刑が確定していたが、晩年は俳人として注目された。『友へ 大道寺将司句集』(ぱる出版、2001年)、『鴉の目 大道寺将司句集Ⅱ』(現代企画室・海曜社、2007年)、『棺一基 大道寺将司全句集』(太田出版、2012年)、『残(のこん)の月 大道寺将司句集』(太田出版、2015年)と句集を出し続け、『棺一基』は日本一行詩大賞の俳句部門を受賞した。

 17年5月に東京拘置所で病死した大道寺元死刑囚は 全共闘運動に物足りず法政大学を中退、より過激な活動に突き進み、74年8月14日には天皇列車を爆破する虹作戦を計画するが、直前に中止。同30日、三菱重工を爆破、死者8人、負傷者165人。東アジア反日武装戦線を名乗り、さらに爆弾事件を続けるが、75年5月に8人のメンバーが逮捕された。87年に死刑が確定していたが、メンバーの一部が「超法規措置」で海外に逃亡したこともあり、執行されない状態が続いていた。

「狭く、一途な」理論の悲劇

 本書は97年以降に、家族らに送った手紙をもとに編集されている。日々の思いや体調などに関する記述が多い。自選の俳句60句も掲載されている。興味深いのは、刑務官(看守)とのやりとりだ。自分の著書を読んでいる刑務官が何人もいるようなので、彼らの控室の図書として備えられているのかと聞いたら、みな「自分で買った」と答える。フランクルの『夜と霧』を読んでいることを知った刑務官が、夜勤の時に自分から話しかけて来たという話も。いろいろ考え、悩みながら仕事をしている刑務官もいる、彼らも死刑囚が何を考えているのか、知りたかったようだと推測している。

 あとがきにあたる部分で、交流が深かった民族問題研究者の太田昌国さんが書いている。戦後の日本の反戦・平和運動の主流は「長崎・広島」を前面に立てて被害者としてふるまい、戦争の出発点を朝鮮の植民地化や中国への軍事侵略に求める視点が欠落していた。「大道寺将司は非主流の歴史観を選んだ・・・戦前の植民地主義支配と侵略戦争を通して巨大な富を蓄積した大企業が、その責任を取ることもなく、戦後も経済成長の要を占めることで、新植民地主義を実践していることを徹底的に批判した」。

 歴史を捉える視点の、めざましい新しさが、そこにはあった、とする。しかし、「理論の幅は狭くとも、行動原理は幅広く取ること。そうでなければ、『狭く、一途な』理論は悲劇を生む」と総括している。

連合赤軍事件の坂口弘死刑囚は短歌

 人生の42年間を獄中で過ごし、「実際にひとを殺した人間と、殺していない人間とは、徹底的に違う」と太田さんに苦渋の思いを語っていたという大道寺元死刑囚。大田さんは句集からいくつかの記憶に残る句を挙げている。

 まなうらに死者の陰画や秋の暮
 死者たちに如何にして詫ぶ赤とんぼ
 春雷に死者たちの声重なれり
 いなびかりせんなき悔いのまた溢る

 話は別だが、連合赤軍事件の坂口弘死刑囚も、短歌づくりで知られ、『坂口弘歌稿』を出版している。朝日歌壇の常連でもあったが、死刑確定後は投稿ができなくなったようで名前を見なくなった。最近の同紙で、高名な選者二人が、アマチュァ投稿歌壇の頂点といわれる朝日歌壇の「過去40年」を振り返り、記憶に残る投稿者数人の名を挙げていたが、そこには、「坂口弘」の名もあった。

  • 書名 最終獄中通信
  • 監修・編集・著者名大道寺将司 著
  • 出版社名河出書房新社
  • 出版年月日2018年3月24日
  • 定価本体1900円+税
  • 判型・ページ数B6版・316ページ
  • ISBN9784309026596

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