朝倉晴人は、美容師の有明美咲に一目惚れをした。以来、晴人は彼女の美容室を訪れるようになる。ある日、美咲は晴人の耳たぶを誤って切り落としてしまう。「わたしにできることがあれば、なんでもします!」と必死に謝る美咲に、晴人は「僕と一緒に桜を見に行きませんか!?」と誘い、意外にもOKの返事をもらう。
デート当日、晴人は自分が「プロのカメラマン」と嘘をついていたことを美咲に打ち明け、謝罪する。「夢ならなにがあってもカメラ続けなさいよ!」と美咲に怒られた晴人は、「あなたに相応しい男になってみせます!」と宣言。情けない自分を変えたいと、再びカメラマンの夢を追うことを決意する。
最初は乗り気でなかった美咲だが、率直で一途な晴人にしだいに惹かれ、2人は結ばれる。ところが、美咲に病魔の影が忍び寄り、人の数十倍の速さで老化する難病を発症。晴人にだけは、失望されたくない、醜いと思われたくない、老婆になっていく姿を絶対に見られたくない。美咲は、晴人から離れる道を選ぶ。美咲は兄とその恋人に支えられながら、日に日に変わり果てていく恐怖に立ち向かっていく。
本書『桜のような僕の恋人』(集英社、2017年)は、タイトルと、裏表紙の内容紹介にある「難病を発症」「儚く」の文字から、切なく悲しげな印象を受ける。ところが、登場人物たちの心情や会話がイキイキと、時にユーモアをまじえて描写されていて、意外性がある。
晴人と美咲が離れた後、2人の再会の時を今か今かと待つのだが、その距離感がもどかしい。小説を読んで泣いたことがあまりない方も、きっと涙を誘われる。読後、自分の大切な人の存在が、もっと愛しいものに感じられる。
著者の宇山佳佑は、脚本家。ドラマ『スイッチガール!!』『主に泣いてます』『信長協奏曲』などの脚本を執筆。著書に『ガールズ・ステップ』がある。
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