読むべき本、見逃していない?

大好きだったノッポさんが帰ってきた

夕暮れもとぼけて見れば朝まだき

 「あ、あなた。お名前はなんていうの。実はね、新番組の司会者を探していてね。あなたをどうだろうかと思ったんだけど、やる気ありますか?」

 (――ほら、こいつだ。こいつがあの世間で言う幸運てやつなんだ。なんてことだろう、ほんとにこういうことってあるんだぜ......)

 「ノッポさん」と聞いて、帽子を被り、無言で工作をする陽気なおじさんの姿が、記憶の隅から蘇ってくる。「できるかな」は、1970~1990年にかけて放送されたNHK教育テレビの工作をテーマにした教育番組だ。子どもたちが創作活動に興味を持つよう構成され、身近なものを駆使して作品を披露するノッポさんと相棒のゴン太くんが人気になった。

 本書『夕暮れもとぼけて見れば朝まだき ノッポさん自伝』(岩波書店)の著者である高見のっぽ(本名 高見嘉明)さんは、1934年生まれ。「ノッポさん」以外にも、同時に高見映として、多数の放送台本、絵本、児童書、エッセイを生み出してきた。現在も俳優、作家、歌手として幅広く活躍中だ。1975年久留島武彦文化賞(日本青少年文化センター)、2006年日本放送協会放送文化賞(NHK)、児童文化功労賞(日本児童文芸家協会)を受賞している。

 本書は、「鞄持ち」「失職四年」「仕事が来た!」「ノッポさんの秘密」「『できるかな』スターパレード」「そして最終回」などで構成されている。芸人だった父の鞄持ちや4年間の失職を経て、偶然にも子ども番組の主役をつかみ、それから現在に至るまで絶えず挑戦し続ける人生を振り返る、初の本格自伝だ。

 高見君、嘉明君、映君、ノッポさん。時に何人もの自分とやりとりをしながら、手探りで歩んでいく。テレビの中のノッポさんは声を発しなかったのに、本書の中には、タップダンサーの顔を持っていたり、実はブキッチョだったり、小さな坊やからおじいさんのノッポさんまで、ユーモアのあるイキイキとした文体で音も色も動きも鮮やかに記されている。「できるかな」を観て育った世代としては、あの頃ワクワクした気持ちを、約30年を経て再び感じることができる。

 ノッポさんは子どもが大好きで、「このおじいさん、ここまで長く生きてきてさ、いろいろとあったんだよ。でね、君たちもこれからいろいろあると思うんだよ。でも、このおじいさんが見てるからさ、がんばってね」とメッセージを込めた持ち唄を唄い、齢80を超えた今も、舞台袖までタップダンスを披露している。


BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 夕暮れもとぼけて見れば朝まだき
  • サブタイトルノッポさん自伝
  • 監修・編集・著者名高見 のっぽ 著
  • 出版社名株式会社 岩波書店
  • 出版年月日2017年11月28日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・192ページ
  • ISBN9784000254274

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