全国でシカが増えているという。なぜ増えているのか。どんな害があるのか。そうすれば共存できるのか。
本書『日本のシカ』は専門家による現時点での報告書だ。サブタイトルにもあるように、「増えすぎた個体群の科学と管理」について、梶光一東京農工大学農学部教授や飯島勇人森林総合研究所主任研究員ら12人の研究者が論じている。
日本のシカの分布域は1978年から2014年までの37年間に2.5倍に広がり、捕獲数は1990年の4万2000頭から2013年の51万3000頭にまで増えているそうだ。これは捕獲数だから、実際に生息しているシカはもっと多い。推計では300万頭を超えるそうだ。
世界的に見ると、シカが増えているのは日本に限らないが、日本の特徴は近年、短期間のうちに急増していることだ。国は法律を改正し捕獲を強化することで今後10年間に半減させることを宣言しているが、ハンターらは高齢化しており、達成できるか分からない。
本書はこうした日本の状況を踏まえて書かれたもので、森林など植生への影響、南アルプス、知床半島、丹沢、屋久島での具体的な対応などについてそれぞれの研究者がこれまでの経緯と最新の状況を紹介している。知床ではオオカミ導入の話もあったそうだが、諸外国の例も検討して見送られたそうだ。
日本での問題点として、対処する人材不足が指摘されている。都道府県の行政担当者に野生動物管理の知識を持つ人が乏しく、そもそも野生動物管理について体系的に学べる大学がほとんどないという。また、日本ではシカ管理の責任の所在もあいまい。多くの都道府県では、シカの個体数を管理する部署と、シカによるさまざまな影響を管理する部署が異なっており、総合的に評価ができてない、なども指摘されている。
全国で「シカ害」が増えていると聞くが、市町村の担当者は是非とも一読し、他県の対策例などを参照すべきだろう。山間部や里山を取材エリアに抱えるマスコミ関係者にも参考になる。
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