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死を目前にして紡がれた最期のメッセージ

生きていくあなたへ

 著者の日野原重明さんは2017年7月18日、この世を去った。105歳の大往生だった。本書『生きていくあなたへ』(幻冬舎)は死を目前にして紡がれた最期のメッセージだ。

 日野原さんが亡くなる半年ほど前、約1か月にわたって毎日インタビューが行われた。それをもとにまとめたものだ。過去の本や発言を再構成したものではない。したがって、「105歳」時点での、日野原さんのリアルな思いがつづられている。

「105歳になられた日野原先生、死ぬのは怖くないですか」
「恐ろしい・・・。あなたにそう聞かれるだけで恐ろしい・・・」。
 

 医者だから、身体が弱っていりことや、「その時」が近づいていることはひしひしと感じる。「だからこそ、朝起きて自分が生きていることが、心から嬉しいのです」。

 本書は「対話」形式をとっている。インタビュアーが質問し、日野原さんがそれに答える形式だ。「105歳まで長生きして幸せだと思いますか」「生まれ変わって生きるとはどういうことですか」「これまでの人生でいちばん悲しかったことはなんですか?」「先生から見て『偉い人』とはどんな人ですか」...。

 前書き部分で日野原さんが語っている。これまで多数の本を書き、講演などをしてきたが、今いちばんしたいのは対話だと。たった一人の人に、言葉を遺したい。したがって本書は、読んでくださる一人一人、すなわち「あなたとの対話」の一冊だと力を込めている。

 付録のような形で「最期のメッセージ」が掲載されている。約20ページ。これは連日のインタビューの最後になって日野原さんが1人で30分以上にわたって話し続けた内容を採録したものだ。1月31日、東京・田園調布の自宅リビングルーム。取材陣も固唾をのんでその言葉を聞き続けた。

 日野原さんは敬虔なクリスチャン。自伝的な一冊、『人生、これからが本番』(日本経済新聞社)の中で、「人を救う仕事は、資格があるからできるという仕事ではない。できる人だけができるのである」と語っていた。亡くなられてからも次々と出版が続いている。この春には、最後の連載となっていた朝日新聞土曜版のエッセイも出版されるようだ。多くの人に感銘を与えた希有な「求道医」の言葉と生涯は、まだまだ語り継がれ、反芻されることになりそうだ。

(BOOKウォッチ編集部)
  • 書名 生きていくあなたへ
  • サブタイトル105歳 どうしても遺したかった言葉
  • 監修・編集・著者名日野原重明 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2017年9月27日
  • 定価本体1000円+税
  • 判型・ページ数B6判・210ページ
  • ISBN9784344031722
 

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