仕事の関係もあって、図書館をよく利用する。大変お世話になっている。不満がないわけではないが、お世話になっているから言わない。むしろ、図書館は大変だなと、ご同情申し上げたい気分だ。
はたして図書館の専門家はどう考えているのか。たまたま図書館で、『図書館のこれまでとこれから』という本を見つけた。
著者の大串夏身さんは1948年生まれ。東京都の中央図書館で73年から20年間、司書をつとめ、その後は大学の教員として20数年間、図書館情報学を講じてきた。これまでにも関連本を多数出しており、いわば業界のエキスパートだ。
現場にいたときは、利用者からの問い合わせに答えるレファレンスサービスの担当が長かった。貸し出しサービスなどの窓口係は短期間しかやっていない。したがって本書の内容も「図書館で調べる」ことが軸になっている。大串さん自身、「人間の知的な創造物を収集して提供する図書館は、知的な創造活動に関わる施設であって、これからは『調べる』がその活動、事業・サービスの中心になるべき」と強調している。
いろいろな問い合わせがあるそうだ。この熟語はなんて読むのですかというような初歩の質問。あるいは新規の事業を起こしたいので、あれこれ調べたいというビジネスの相談。このことについて詳しく知るには、どんな本や資料を読めばいいでしょうかという王道のSOS。そんなこと自分で調べたら、と言いたくなるが、図書館員の重要な仕事の一つだそうだ。海外からFAXが来たりもするというから大変だ。
なるほど、図書館は貸し出しだけでなく、「調べる」サービスをこんなにも重視しているのか、と言うことを初めて知った。
そして、もっと知られていないかもしれないことがある。日本人の図書館利用はものすごく増えているのだ。1975年の図書館数は1066館で、貸出冊数は約7500万。それが2015年は3331館に増え、貸し出しは約6億6000万冊、国民1人当たり年間6冊近くになる。40年間で図書館数は約3.1倍、貸出件数は約8.8倍だ。
そうした中で一般の利用者の最大の関心は、話題の本がいつも貸し出し中で、借りられないということだろう。新聞などで、図書館がベストセラーを買いすぎるということが問題視されることがあるが、わかってないなあと思う。全国の図書館が仮にミリオンセラーの『九十歳。何がめでたい』を10冊ずつ買っても、100万部の中のわずかだ。それよりも、近所の図書館で『九十歳』がずっと貸し出し中ということの方が、イラッとする。もちろんこれは仕方のないことではある。出版社や著者にとっても、いちがいにマイナスとはいえない。諦めて買う人が増えるからだ。
今ではネットで図書館の貸し出し状況をチェックできるのでありがたい。しかし、トラブルで停止した千代田区のコンピューターサービスはいったいいつになったら直るのか。
こうし利用者のイライラの頂点に鎮座しているのが、国立国会図書館だろう。本の貸し出しを請求して、ぱらぱらめくって、コピーを頼むと、かなりの時間がかかる。無駄な待ち時間が長い。もちろん窓口の人たちは一生懸命なのだが、本が借りられないのは何とかならないのか。本書では国会図書館の「レファレンス協同データベース」への参加や、副本を購入して貸し出しもできるようにすべきだということを提言している。同感する利用者が多いのではないか。
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