共稼ぎ、シングル親の家庭が増えて、家事専業者はほとんどいない状態という。にもかかわらず、何ごともきっちり好きなわが国の国民性か、時代が変わっても、求められる家事の質や量は変わっていない。現代の兼業の担い手だけで賄うのには無理があり、きしみが生じているというのが本書の指摘だ。アウトソーシングできるところはそれに依存するなど、手を抜けるところは手を抜いて、合理的に考えましょうと提案している。
シンクタンクの意識調査や国民生活をめぐる調査を検討すると、いまや専業主婦はごく少数しかいないという。共働きの夫婦が増えているにもかかわらず、国際的調査によれば家庭の家事分担率は世界最低の水準で、夫婦間でみた割合でも日本の女性は「家事のしすぎ」が明らか。
それならば、夫たちを"啓蒙"することで改善を目指せばいいのではとも思えるのだが、そうは簡単にいかないらしい。
女性たちを知らず知らずのうち「家事のしすぎ」に向かわせるのは「丁寧な暮らし」という理想のライフスタイルだ。テレビや雑誌、その他のメディアでしばしば「季節感」や「手作り」をテーマにして暮らす、カリスマ的な人たちが紹介される。時季に合わせたヘルシーでスタイリッシュな生活ぶりは強く女性たちにアピール、現実にはそれにならうことはなかなかできないが、仕事に忙しい夫と二人三脚ではムリと、一人努力することになる。
著者の佐光紀子さんは1984年に大学卒業後、繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に携わった後に翻訳家に。翻訳の仕事を通して重層や酢など自然素材を使った家事の有効性を知り研究を始め、翻訳家のほかナチュラルライフ研究家としても著作や講演などを行っている。
家事をめぐり調べを進めていくうちに分かったことの一つとして佐光さんは「『ちゃんと』『きちんと』『自分で』家事をすることへの評価が意外に高い」ということに気づいたことをあげる。それがかえって呪縛となって、少しずつ変わってきているとはいえ、業者に掃除を依頼するなどアウトソーシングに罪悪感がつきまとい、なかなか「家事のしすぎ」を脱することができなくなっているという。
本書ではほかに、近年ブームになっている「断捨離」や「ミニマリズム」について紙数を割いている。日本の家屋は構造的なことから片付かないわけがあることなどを指摘。「捨てること」「持たないこと」で"求道的"なことが強調されている傾向を概観して、状況に適した柔軟な取り組み方もあることを紹介している。
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