2016年に83歳で亡くなった永六輔さん。新聞記者として最も身近にいた元朝日新聞記者の隈元信一さんが書いた本格的な評伝だ。永さんはあまりに多彩な活動をしていたため、その全体像がとらえにくい人でもあった。隈元さんは「六輔」の名前にちなみ、「六面体」として、あえて俗な表現も交えてその活動を振り返った。すなわち、旅の坊主、ラジオ屋、テレビ乞食、遊芸渡世人、反戦じいさん、ジャーナリストという6つの側面である。
六面体ともいえる人生を貫いた「一筋の道」があるという。自ら作詞し歌った「生きているということは」から、こう引用されている。「生きているということは、誰かに借りをつくること 生きているということは、その借りを返してゆくこと 誰かに借りたら誰かに返そう」
戦後の民主主義の浸透に伴い、放送の民主化もすすんだ。NHKラジオ『日曜娯楽版』に中学生の永さんはコントの投稿をした。長い放送とのかかわりのスタートである。以降、『お笑い三人組』『光子の窓』『夢であいましょう』など伝説的な番組とのかかわりが詳しく描かれている。著者は1987年に初めて永さんを取材して以来、放送担当記者、編集委員として長尺の連載もので永さんの仕事を紹介してきたので、裏付けはしっかりしている。東日本大震災の後には、被災地に同行して一緒に臨時災害FM局の番組にも出たという。
通読して思ったのは、永さんは「戦後民主主義をもっとも体現した人」ということ。そしてメディアがそれを望んだということだ。
本書の執筆は永さんの生前から始まり、ご本人から「いつ本になるの?」とせかされる中、没後の刊行となった。約100冊近い永さんの著書の案内、関連年表もあり、今後の永六輔研究のマイルストーンとなる書だろう。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?