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京都大出身者は無関心ではいられない

赤軍派始末記

 赤軍派の議長だった塩見孝也さんが2017年11月14日に76歳で亡くなった。日本の新左翼諸派の中で最も過激なセクトの指導者だった。赤軍派はなぜ「世界同時革命」を志向し、軍事路線を突っ走ったのか。世間を騒がせた様々な大事件をどう考えていたのか。

 タイトルに興味を持って、図書館で借りてきた。

「元赤軍派議長」の看板を掲げ続ける

 「始末記」と言うからには、ザンゲの総括がつづられているのかと思ったが、必ずしもそうではない。

 というのも、塩見さんは1969年9月に赤軍派の議長になったものの、翌70年3月15日に逮捕され、約20年間、獄中生活を送っていた。したがって、70年3月31日に起きた赤軍派による「よど号ハイジャック事件」、71~72年の連合赤軍によるリンチ殺人事件や「あさま山荘事件」には直接関与していない。72年5月の「テルアビブ空港乱射事件」など、80年代にかけて頻発した日本赤軍の事件についても同じだ。

 しかしながら赤軍派の「よど号」グループや、赤軍派から枝分かれした「連合赤軍」「日本赤軍」のメンバーの多くは、塩見さんが赤軍派を立ち上げたころからの「同志」や「配下」だ。そんなこともあり、連合赤軍事件については、「過ちの責任は、あれこれ全てをおしなべれば、最終的には僕や革命左派(京浜安保共闘)の議長だった故川島豪にある」としている。そして、自分があえて「元赤軍派議長」の看板を掲げ続けるのは、様々な非難や責任追及、質疑に身をさらし、逃げない覚悟の故と説明している。

 中核、革マルなどの内ゲバ事件では、100人近くが死んでいるが、幹部の責任はあいまいだ。それに比べると、自らの「責任」を認める塩見さんはそれなりに潔かったのかもしれない、と思ったりもする。

「田舎の純朴な青年」がカルチャーショック

 本書は、これまでに何冊もの連合赤軍がらみの本を出版している彩流社の編集部が聞き役となり、塩見さんに長い活動家人生の様々な出来事についてただしたものだ。2002~3年のインタビューがもとになっている。

 1941年、大阪で生まれた塩見さんは、医者だった父の仕事の関係で岡山や広島に移る。広島大学附属福山中時代は柔道部で硬派、同高校時代は一転、文学青年になり、京大文学部へ。大学生協でバイトを始めたら、そこが社学同の活動家のたまり場だったため感化される。自称「田舎の純朴な青年」はカルチャーショックを受けて、学生運動にのめりこんだ。

 それにしてもなぜ過激な軍事路線に傾斜したのか。塩見さんは「赤軍派の核はロマンチシズム」だという。「ピュアなスピリッツ」も加えている。幕末の志士、戦前の右翼の青年将校、特攻隊などと似た体質があったと自己分析する。

 愛読者は『水滸伝』。腐敗した権力と闘う豪傑は最高だったと懐かしんでいる。ヒロイズムに酔いやすいタイプだったのかもしれない。だからか、「よど号」事件について「民衆は歓呼で迎え」などと書いており、世間感覚とはズレがある。

 赤軍を結成した69年は、キューバ革命からまだ10年、毛沢東の中国建国からも20年しかたっていなかった。いずれも武装闘争で革命を成功させている。しかもベトナム戦争が激化する一方。世界的に見ても、当時は様々な武装闘争が起きた。70年代にかけてパレスチナのPFLP、イタリアの赤い旅団、西ドイツのドイツ赤軍。それぞれがハイジャックや誘拐、暗殺、銀行強盗、爆破などを繰り返している。塩見さんは、ベトナム戦争が終結する75年までは武装闘争の必然性があったと思う、と振り返っている。

今年はロシア革命から100年

 本書にはかなりの数の活動家が実名で登場する。所属・出身大学も記されている。赤軍派の結成時の幹部7人のうち4人は塩見さんら京都大学。そのほかテルアビブ空港事件、よど号、連合赤軍などの関係者もあわせると京大出身者は10人を超える。京大の前身、旧制三高の寮歌に「通える夢は崑崙の 高嶺の此方ゴビの原」という気宇壮大な文言があるが、赤軍派の「国際根拠地建設」などの主張と、どこかシンクロしているような感じもする。

 その後の人生はさまざまだ。北朝鮮で死亡、山岳アジトのリンチで粛清、あさま山荘の銃撃戦で逮捕され、のちに超法規措置で釈放・国外逃亡などなど。さらにネットで調べると、途中で退いたメンバーの中には、今では思いもよらない全く別の人生を歩んでいる人もいることがわかりびっくりする。

 今年はロシア革命から100年という節目の年でもある。思い起こせば、レーニンの兄、アレクサンドル・ウリヤノフは、ロシア皇帝アレクサンドル3世の暗殺計画に加わったとして絞首刑。スターリンは革命資金調達のため、銀行強盗を重ねたたことで知られる。革命を成功させたレーニンは反対派に「赤色テロ」を辞さず、スターリンはさらに大粛清を展開する。

 赤軍派にはおそらく、ロシア革命の成功物語が刷り込まれていたのだろう。実際、資金調達のため、郵便局や銀行を襲撃する「M作戦」を繰り返している。1900~10年代のロシアと、60~70年代の日本とは、政治的社会的状況に大きな違いがあったはずだが・・・。ロシア革命の歴史も踏まえ、塩見さんはこうも言っている。

「連合赤軍問題の総括の中心は、スターリン主義の問題」
「スターリン主義の克服はレーニン主義に留まらず、マルクス主義の人間観、哲学の限界に由来するきわめて底の深く、思想・哲学上スケールの大きい問題です」
  • 書名 赤軍派始末記
  • サブタイトル元議長が語る40年
  • 監修・編集・著者名塩見孝也 著
  • 出版社名彩流社
  • 出版年月日2009年11月 1日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数B6判・293ページ
  • ISBN9784779114861

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