タイトルは全国各地の風変りな祭りを集めた事典的な書籍を思わせるが、本書はそうしたシンプルなものではなく、さまざまな祭りを訪ね歩き、それぞれについて歴史の奥行きと地域的な横の広がりを、エッセイと写真でとらえた紀行集だ。
著者は時代を越えて伝わる祭りの取材経験から「過去は写真に写せる」ことに気がついたという写真家。読む者の"心のタイムマシン"の起動を促す。
著者の「奇祭」の原体験は、故郷である長野・諏訪の御柱祭。20代を過ごしたバブル期の海外志向とは様相を変えて現代では、若者らを中心に日本回帰の流れを感じ、いまこそ、子どものころの思い出として強烈に自分に宿るイメージを撮ろうと考えた。
なかなかうまく撮影ができず試行錯誤を繰り返すなかヒントを得る。はるか昔の祭りの起源に空想をめぐらし、祭りの宴をカメラのファインダー越しに見ると「遠く縄文から連なる古層の人々の姿を、まざまざと感じられる瞬間があった」
写真は、自分がいるその場の、たった今しか写せないものだが、それは常に真実ではなく、祭ではとくに遠い過去を捉えられることが分かった。著者は「本来、とれるはずのない古層を祭りを通して撮る」ことを決意して諏訪を出発した。
週刊新潮(2017年9月28日号)の書評で本書を取り上げた詩人の渡邊十絲子さんは、遠い過去に想像や共感が及ばない若くて元気な時は未来しか見えないが、大人になると古くからの習俗や信仰に興味を持ち始めると述べ「この種の本には自然に手がのびる」と評した。心のタイムマシンのスイッチが入ったに違いない。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?