伊坂幸太郎の本が今年(2017年)続けざまに刊行されている。殺し屋シリーズの『AX』(KADOKAWA)が7月、そしてこの『ホワイトラビット』が9月に、さらに『クリスマスを探偵と』(河出書房新社)が10月に出る。伊坂ファンにとってはたまらない「読書の秋」となった。
本作は伊坂が住む仙台が舞台となっている。誘拐組織に属する主人公は、同じ組織に妻を誘拐されてしまう。解放のため、ある一軒家に乗り込むが、大掛かりな人質たてこもり事件となってしまい、収拾がつかなくなる。
仙台が舞台の伊坂作品というと、映画化もされた『ゴールデンスランバー』(2008年、山本周五郎賞受賞)を思い浮かべる人も多いだろう。警察に追われ仙台市内を転々としながら脱出の機会をうかがう主人公に声援を送ったものだ。今回は籠城ミステリーの趣の作品となっている。果たして脱出は可能か?
面白いのは文体だ。三人称と一人称が混在する。その叙述のマジックに読者は圧倒されることだろう。インタビューに対し「小説でしかできないことにチャレンジしたつもりです」と著者は答えている。相当の自信作に違いない。
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