日本は出版不況が続くが、インドでは出版業が伸びている。2017年9月18日の朝日新聞の記事によると、インドの書籍の市場規模は約6300億円で世界6位。このところ毎年2割増で成長しているそうだ。
本書はそのインドの中でも、世界的に注目されている出版社「タラブックス」に焦点を当てて、成功の秘密などを紹介したものだ。
タラブックスは1995年、独立系の出版社として南インドのチェンナイで生まれた。児童書、いわゆる絵本を得意とする。成功の背景にはインド独自の事情もあるようだ。
多言語国家のインドでは英語やヒンズー語以外の言語を話す人も多い。絵本は文章が少なくてわかりやすいから、浸透しやすい。加えてインドの識字率も、2001年に65%だったが、11年には74%にアップ。日本でいえば明治中期から後期、言文一致運動が起こり、鴎外や漱石が登場するころと似ている。国全体として出版ブームが起きやすい状況にある。
タラブックスで特筆されるのは、「手作り」を重視したこと。インド各地には地域独自の民俗的、伝統的なアート作品が数多く残るが、それらを担う名もなき地元芸術家に注目し、デザインや作画に登用した。紙から印刷、製本に至るまでハンドメイドにこだわる。08年には、有名なボローニャ・ブックフェアで『夜の木』がラガッツィ賞を受賞し、国際的な評価を高めた。同社の本は、日本でも「タムラ堂」などからすでに10数冊が翻訳出版されている。
本書は、編集者、ライター、カメラマンなど日本で出版業に深く関わる3人の専門家が、現地を訪れ、出版過程などをつぶさに見てきた報告書だ。全体は6章に分かれ、3人が分担している。インドの小さな出版社が、「子供たちに良質の本を届けたい」という発足時の精神からブレることなく、「まっすぐに本をつくっている」ことへの驚嘆と羨望の思いがあふれている。児童文学や絵本に関心がある人はもちろん、出版や書店関係者にとっても気になる本だ。
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