映画「三度目の殺人」(2017年9月9日公開)をノベライズした法廷サスペンス小説。映画の脚本も担当した是枝裕和監督と、ノベライズ作家の佐野晶さんが執筆にあたった。映像では伝わりにくい機微の描写が豊かで、ポイントとなる伏線の印象付けが巧み。映画とは別の意味で視覚的だ。
殺人で服役して仮釈放中の58歳の三隅高司は、勤務していた食品加工会社の経営者を殺害し金を奪い逮捕、起訴された。46歳の弁護士、重盛朋章に三隅を弁護する話が持ち込まれ、重盛の個人事務所でデスクを借りている "ノキ弁"、29歳の川島輝と、引き受けることになった。
重盛は、刑事裁判の弁護で勝利するためには「真実は必要ない」として、いわゆる法廷戦術を重視し活動を行っている。三隅は仮釈放中の再犯で容疑は強盗殺人。「死刑」は間違いないとみられ、弁護活動の目標は無期懲役への"減刑"だ。重盛たちは調査や証言集めから、計画性がなかったと「殺人と窃盗」を主張できる可能性を見つけ出す。
だが三隅の態度は不自然なうえ、供述を二転三転させ重盛たちを翻弄する。あいさつのため訪れた被害者の遺族や、会社の従業員の様子にもワケありの雰囲気が漂う。遺族は妻と娘。重盛と川島は少し前に訪れた事件現場で娘を見かけている。足に障害を抱えているような歩き方だった。
事件をめぐり、さまざまなことが浮上する間に、この娘と三隅との間に接点があったことが明らかになる。重盛の父親は裁判官で、三隅の最初の殺人を裁いた過去があることも分かった。ラストに向かって、タイトル「三度目の殺人」の意味が少しずつ明らかになってくる。
映画では重盛を福山雅治さん、三隅を役所広司さんが演じている。本書では、好みのキャスティングで楽しめる。
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