食料を現地調達する「サバイバル登山」を実践している登山家、服部文祥がとびきり挑戦的な小説を書いた。2つの作品が収められている。まず書名にもなっている「息子と狩猟に」は、振り込め詐欺グループの描写から始まる。彼らは対象となる老人を「食う」だけでなく、グループ同士食い合いをする。生きるか死ぬか。そのしのぎ合いの中で、仲間殺しが起きる。一方、小学生の息子と山に狩りに入った父親がいる。両者が山の中で遭遇する。息子を守ろうとした父は殺人犯と対峙した時にどうするのか?
もう一作「K2」は、世界第二の高峰の登頂に成功後、悪天候に巻き込まれる場面から始まる。目の前には遭難したイタリア人登山家の遺体があった。生き残るために彼らがとった行動とは? 実際にカラコルム・K2の登頂に成功した著者による描写にリアリティがある。
2作に共通するのは、生きるために人はどこまで獣になることが許されるかということだ。
評を書いた冒険家の角幡唯介氏は「同じ冒険行為を行う書き手として、よくここまで書けたなという驚きを禁じ得なかった」とし、「今年最大の問題作だ」と賛辞を送っている。
この夏、NHKの番組に著者一家が登場し、実際に新潟県の山中で「サバイバル登山」をする模様が放送された。魚を釣り、ヘビをつかまえ、数日間キャンプをするというものだった。牧歌的な内容だったが、小説という観念の中で著者は人間のモラルを問う過酷な思考実験をしていたと知り、さらにこの登山家に興味が湧いた。
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