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「白い虚塔」のあきれた教授たちを思いっきり戯画化

院長選挙

 

 新聞広告に『白い巨塔』(山崎豊子)と『文学部唯野教授』(筒井康隆)を足して2で割ったような小説、という惹句があり、手に取った。大学医学部のポスト争いという点では前者の構造を借用し、大学教授の非常識さを戯画化した点では後者をさらに徹底したのが本書だ。

 

 国立大学の医学部の最高峰、天都大学医学部付属病院の院長が謎の死を遂げる。4人の副院長が候補者となり、院長選挙が行われることになった。彼らを取材するフリーライター吉沢アスカが見たのは、他の診療科を差別する歪んだ特権意識と非常識な言動だった。

 

 たとえば、循環器内科の教授は外科をまったく認めず、臓器にもヒエラルキーがあり、心臓が最も重要だから、循環器内科こそが医療界の頂点に立つと言ってはばからない。また整形外科の教授は、内科と外科の覇権主義が医療崩壊の原因であり、医学が進歩し高齢者が増えると、人工関節などの需要が高まり、整形外科こそがこれからの日本になくてはならない科だと主張する。

 

 人格的にも問題を抱えている。パワハラ、セクハラ、看護・薬剤などコメディカルへの差別。このままでは誰が院長になっても絶望的な状況なのだが......。

セクショナリズムが極大化した医学界

 

 著者の久坂部羊は、大阪大学医学部卒の現役医師にして作家。医師だからこそ知る医学界の内情が、ここぞとばかりに書かれている。医者として、こんなことまで書いて大丈夫かと心配になってしまうほどだ。どこの社会、会社にしても、多少のセクショナリズムはあるだろうが、小さいころから挫折を知らず、医師になってからもちやほやされるばかりの医学界では、それが極大化しているというのだ。

 

 発端となった前院長の死の真相をめぐるミステリーとしても楽しめる。あっという間に読了すること間違いない。登場人物のネーミングも、それぞれに凝っていて、笑える。(BOOKウォッチ編集部 JW)

  • 書名 院長選挙
  • 監修・編集・著者名久坂部羊 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2017年8月25日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六版・285ページ
  • ISBN9784344031593

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