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2度読みさせる仕掛けにはまる

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

 2016年末に公開された大ヒット映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」。

 七月隆文さんによる同タイトルの原作小説は、「泣ける恋愛小説」として、2014年の刊行以来、「恋愛小説のおすすめランキング(WEBサイト読書メーター)」1位、「10~20代女性が読んだ文庫本(日販調べ)」1位など、若い女性を中心に人気を集め、150万部超えのベストセラーとなった。

 著者は、桜庭一樹さんや冲方丁さんと同じく、ライトノベル出身。本作は、著者初の一般文芸作品である。

 物語は、京都の美大に通う「ぼく」が、電車の中で一目惚れした女の子に声をかけるところから始まる。

 「ぼく」の視点で語られる2人の日常は、とりたてて事件が起こることもなく過ぎてゆくが、中盤、「彼女」からある秘密を明かされることで、物語は大きく展開する。

 「この世界の隣に別の世界がある・・・・・・って言ったら、どう思う?」

 「彼女」は、時間が逆に流れる別の世界から来たのだと告げる。過去と未来が反転する世界に生きる2人が、同い年の20歳として出会えるのは40日間だけ。

 限られた時間の中ではぐくまれる愛は儚く、切ない。従来のSFのテーマであるパラレルワールドは、本作では、「限られた時間」をつくり出す仕掛けであり、あくまで、制約つきの恋人たちの濃密な時間を描くことが中心となっている。

 2つの世界の時間の流れが逆という設定にしているのもミソ。一方の「最初」が一方の「最後」であることに気づかされたとき、「ぼく」の生きる時間の流れに従って書かれた本作を、もう一度、「彼女」の視点から読み直してみたくなる。

 

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