大阪の「新世界」といえば、通天閣を背景に「づぼらや」のふぐの看板が宙を泳ぐ風景がおなじみ。物語の舞台になればその位置づけは「時間が止まったような場所」なのだが、そこに数々の先端機器が登場して「SF新喜劇」が繰り広げられる。
日本各地でロボットの導入が進み、新世界でも通天閣の周囲をドローンが出前に、宅配に、宣伝に飛び回り、何をするにもAI(人工知能)だのみだ。坂(阪)田三吉を生んだ新世界は将棋でもおなじみだが、物語ではAIを搭載した炊飯器が強さを発揮する。
その後、炊飯器には人格が宿り、テレビの大喜利でロボットに負けた芸人と漫才でかけあいまでするようになる。AIが進化し人間の能力を超えることで起こる「シンギュラリティ(特異点)」もかくやと思わせるが、関西出身の評者、文芸ジャーナリストの佐久間文子さんは「ドローンもロボットも、この新世界の住人に似たのか心優しく、あまり甲斐性がない」とみる。
「自己同一性といった哲学的な話題もさりげなく織り込みつつ、最後までテンポのよい会話で笑わせ続ける」
2017年の第61回岸田國士戯曲賞(白水社主催)受賞作。
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