著者によれば、「リーダーシップとは何か」という答えに共通認識は存在しないといいます。卓越したリーダーと称された人物が、業績の悪化で瞬く間に無能扱いになるケースを、私たちは数多く目撃してきました。それこそが現実です。ならばリーダーシップについて矛盾に満ちた解釈を検証して結論づけるより、その場面、場面でのベストプラクティスを模索したほうがいいといえないでしょうか。
本書では、ゴールドマン・サックスで培った豊富な経験に裏付けられた著者の見識や、研究成果、ハーバードの学生や卒業生との対話から、ベストプラクティスを見出していきます。まずリーダーシップで第一に掲げられるのは、経営者マインドをもつことです。経営者のような心構え(マインドセット)で、思索し、行動することが視野を広くします。第二に、たゆまぬ能力アップ。時代の新しい変化は、いままでの経験だけでは太刀打ちできません。
そして第三に、リーダーとしてのスキルを伸ばすこと。明確なビジョンを描き、それを実現するための優先事項を決め、方向性を定めるという「知的プロセス」や、努力と集中力と注意力が常に求められる、「自分を知るプロセス」を習得し、習慣化することです。最後に、チームの協力と行動力を導きだすための真の人間関係を築くこと。リーダーシップは、団体競技であることを忘れてはいけません。アドバイスや意見をもらえる環境づくりが必要です。
著者は、誰もがリーダーになれるといいます。リーダーシップは生来の資質、人間の特性の問題だと思い込んでいる人が多いけれども、そうではありません。リーダーシップは、自ら学び、習得するものなのです。
■著者
ロバート・スティーヴン・カプラン Robert Steven Kaplan
カンザス州出身。カンザス大学で学士号、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得し、ゴールドマン・サックスに22 年間勤務した。ゴールドマン・サックスでは、副会長として、グローバル投資銀行部門と投資運用部門の監督責任を担った。2005年ハーバード・ビジネス・スクール教授に就任し、さまざまなリーダーシップ講座や、管理職向けのプログラムを担当した。2015 年より、ダラス連邦準備銀行総裁。著書に、『ハーバードの自分を知る技術』『ハーバードの"正しい疑問"を持つ技術』(小社刊)がある。