本を知る。本で知る。

立ち止まって見るイタリアには、いろいろな音があり、色と匂いがある

 『ジーノの家』で、日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイスト賞をダブル受賞した著者が綴る心に響く60編。madameFIGARO.jpに連載中の好評コラム「イタリアの引き出し」から厳選しました。

著者が出会った、イタリアのふつうの人々や大切なもの、情景が絶妙な筆致で活写されています。それは、公園で泣きながら隣に座った女子高校生であったり、旅先の港で見かけた老夫婦であったり、〈楽譜〉という名のパンを焼く女性たちであったり、ベランダで咲いていた小さくて薄い桃色をしたベゴニアの花であったり、シチリアの太陽と海の風を受けて育つ、若いオレンジのジャムだったり、ミラノのゲリラ芸術家の落書きであったり……。

オールカラーの各コラムには、小さい写真が添えられていて、著者の描く迷宮にそのまま吸い込まれていくようです。また一つひとつのコラムの冒頭には、イタリア語と日本語で内容をサジェスチョンするカラー付箋が配されています。後から読み返すときに楽しいしかけです。たとえば、「autunno秋」「cibo食べ物」「mercatoマーケット」「arteアート」「gente人々」「dono贈り物」「modaファッション」など。組み合わされた付箋で、いつの季節に何についてしたためられたのか一目瞭然です。

著者は日々収集した日常のあれこれを引き出しに詰め込み、大切に保管しています。ときどき取り出してそうっと眺めています。すると入れたときには気づかなかったことが突然明らかになることがあります。「それは、大事にしまっておいた思い出がいっせいに息を吹き返し、共演する舞台を見るような瞬間」なのです。
 
 
 

書名:フィガロブックス イタリアの引き出し
著者:内田洋子
発売日:2013/5/31
定価:1,785円(税込)

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