刑事物の映画やドラマは数多くあれど、
実際の刑事の方に事件の話を聞く機会は中々ないのでは?
しかし、本作を読むと、実在の刑事が関わり感じた
様々な事件のストーリーを知ることが出来て興味深いのです。
サダさんこと、菊池貞幸さんは北海道北見市生まれ。
北海道江別署の駅前交番に始まり、
機動捜査隊や銃器対策課などでも活躍しましたが、
その熱さゆえに左遷されてしまいます。
権力やお金に屈することなく自分の信じる道を突き進んだ
菊池さんの42年間の刑事人生を垣間見ることが出来ます。
家出娘、自転車泥棒、殺人事件、交通事故、
菊池さんが刑事を続けていく上で出会う様々な出来事、
人々との触れ合いが記されている。
警察の人は、事件が起こるまで動いてくれない・・というのは
聞く話だけれど、じっくり話を聞いてくれ、自ら動いてくれる菊池さん。
数あるエピソードの中で印象に残るのは、
幼い子ども二人を残して、夫に殺されてしまった妻の話。
小学校の運動会の日、見に来てくれるはずだったのに
現れなかったお母さんを心配し子どもたちが家に戻ると
お弁当を作っている途中で、殺されていました。
母を殺された子どもたちのことを想うといたたまれなくなります。
また、別のエピソードでは、
すでに死亡している、ある殺人事件の犯人の母親が菊池さんに語ります。
『もし地獄で息子に会うことが出来たら、なんであんなことをしたのか聞きたい、
あれだけオッパイたくさん飲ませて育ててあげたのに。でも、
それから抱きしめてあげたい。あの子の母親だから・・。』
母の愛に涙します。
事件簿の中で、各人が感情移入できるエピソードがあるのではないでしょうか。
また、菊池さんの刑事としての話だけではなく、
一人の人間として、あの判断は果たしてあれで良かったのか・・
あの時ああしていれば違う未来があったのではないか・・
と過去のことを思い悩む場面が、誰しもそうなのだと共感できます。
菊池さんに習い、
良い出来事が起こったとき、起こりそうなとき、
これから心で呟こうと思います。
『神様、ありがとう』と...。
【局アナnet】小原千佳(シネマアナウンサー)
書名:道警刑事サダの事件簿
著者:菊池貞幸発売日:2012/8/15定価:629円